2020 Fiscal Year Research-status Report
The mechanisms of the dysregulation of brain water channel aquaporin 4 (AQP4) after acute ischemic stroke in mice brain
Project/Area Number |
20K15895
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
毛内 拡 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 助教 (90708413)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アストロサイト / アドレナリン受容体 / 細胞間質液 / 脳脊髄液 / アクアポリン4 / 脳梗塞 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳梗塞は、脳血流のみならず脳脊髄液(髄液)の流れも停滞させる。これまで申請者らは、健康状態にあるマウス脳で、髄液の流れを生み出す機序に、脳の水チャネル分子であるアクアポリン4(AQP4)が関与することを報告してきた(Monai et al., PNAS, 2019)。一方、脳梗塞発生後1~2時間にはAQP4の標識が減少し始め、髄液の流れが滞留し損傷が拡大することを明らかにしてきた。しかしながら、脳梗塞によってAQP4の標識が減少する詳細な分子機序は解明されていない。 本研究の目的は、脳梗塞の超急性期におけるAQP4分子の標識の変化が、接着タンパク質の分解による「非局在化」によって引き起こされると仮定し、生化学的手法を用いて明らかにすることである。 初年度は、レーザーを用いた光血栓法によって、マウス大脳皮質に局所的に脳梗塞を引き起こすための準備を整えた。その後、脳を固定し、免疫組織化学染色の手法を用いて、AQP4と血管内皮細胞およびアストロサイトの足突起を共染色することによりAQP4の局在を評価するための準備を整えた。さらに虚血後のAQP4の標識減少が、内在化によるものか、非局在化によるものかを区別するために、アストロサイトの足突起とAQP4の共染色により内在化を評価し、アストロサイトの細胞体との共染色により、非局在化を評価するための準備を整えた。 研究代表者はすでに、アドレナリン受容体の遮断によって、脳梗塞1時間後でAQP4がより局在化することを見出している。さらに、脳梗塞などの脳障害に共通して見られる高濃度カリウムが誘導する大脳皮質の異常興奮の波の伝播・拡大(皮質拡延性抑制)に関する研究を推し進め、アドレナリン受容体の遮断によって、皮質拡延性抑制からの回復が有意に促進する知見を国際誌に報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルスの影響で研究施設の入構が2ヶ月ほど規制された影響で、実験系を一度閉鎖したため、その再構築から始める必要があった。そのかたわら、より実験系をシンプルに組み直し、脳梗塞などの脳障害に共通して見られる高濃度カリウムが誘導する大脳皮質の異常興奮の波の伝播・拡大(皮質拡延性抑制)に関する研究を推し進めた。この研究では、当初予定していたアクアポリン4の局在を解析するまでは至らなかったが、アクアポリン4を発現する主要な脳細胞であるアストロサイトの機能を一部欠損した遺伝子改変マウス(IP3R2KOマウス)を用いた解析を行った。その結果、IP3R2KOマウスでは、高濃度カリウムによって引き起こされた皮質拡延性抑制からの回復が有意に遅くなることが明らかとなった。またその機序に細胞間質液のカリウムイオン濃度の正常化が関与していることを見出した。さらにアドレナリン受容体を遮断することで、皮質拡延性抑制からの回復が有意に促進することを見出した。この結果は、国際誌に掲載された。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、光血栓法によって局所的な脳梗塞を引き起こし、損傷領域(壊死領域)における生化学的な解析を行ってきた結果、アドレナリン受容体を遮断することで、損傷領域を最小限に抑制できることを明らかにしてきた。またアドレナリン受容体の遮断によってアクアポリン4のアストロサイト足突起における局在が維持されることも見出してきた(Monai et al., 2019)。さらに、アドレナリン受容体の遮断によって、脳梗塞に伴って発生する皮質拡延性抑制からの回復が有意に促進することも見出した(Monai et al., 2021)。 これらの結果から、アドレナリン受容体の作動が脳梗塞の予後を左右すると考えられる。光血栓法による脳梗塞モデルにおいては、虚血により血圧低下を始めとして全身にさまざまな影響が生じるため、脳における機序のみを解析するのは困難であると予想される。したがって、今後は、アドレナリン受容体の作動薬を脳表に添加することで、より詳細な機序の解明を目指す。具体的には、アルファ1型アドレナリン受容体の作動薬 Methoxamine、アルファ2型アドレナリン受容体の作動薬dexmedetomidine、ベータ型アドレナリン受容体の作動薬Isoproterenolをそれぞれ用いる。1時間から3時間程度作用させた後のアクアポリン4の局在を生化学的な手法によって解析し、アドレナリン受容体とアクアポリン4の関係をより浮き彫りにしていく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響で大学が閉鎖していたため消耗品の購入予定が変更となった。また在庫品薄のため、代替品を購入したため。 今年度は、昨年度大学閉鎖のために数を減らした実験に使用するマウスの拡充をはかるため、マウス飼育に関する費用に充てんする。
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