2022 Fiscal Year Research-status Report
マウス言語知覚野の探求:超音波発声に応答する皮質領野
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20K15896
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
山岸 達矢 新潟大学, 医歯学系, 助教 (50804580)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 超音波発声 / 求愛歌 / 聴覚野 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は雄マウスが雌マウスに対して歌う求愛歌に対する聴覚中枢の反応領野を解析し、ヒトでいうところの言語知覚野に相当する大脳皮質がマウスにも存在するか調べることである。 フラビン蛋白蛍光観察は、雄の求愛歌に応ずる皮質反応の半球優位性も併せて検証するために両側の聴覚野を同時測定するシステムを構築し、両側同時測定に必要なレコーダーソフトと解析ソフトの開発は完了し、2021年度には8-10週齢の雄マウス7匹、雌マウス8匹を用いて雄の求愛歌に対する聴覚野反応を両側同時に測定した。聴覚野の6亜領域(A1,A2,AAF,DA,DM,DP)別に反応ピークの左右差検討を行ったところ、若年の雄、雌はともに明らかな左右差がないことが判明した。 2022年度には交配出産を経験している雌マウス(経産マウス)11匹と交配出産を経験していない同週齢の雌マウス(未経産マウス)5匹を同様の実験を行ったところ、経産マウスのAAF,DA,DM,DPの4領域で左半球の反応が有意に増強していることが判明した。 ヒトでは右利きの95%で言語野(Wernicke野/Broca野)は左半球に存在していることが知られているが、マウスにおける言語的コミュニケーションツールと言われるUSVsも左半球優位に知覚されている可能性がある。マウスは言語を持たない動物とされているが、マウス間のコミュニケーションにおいてヒト言語野と共通する左半球優位性を見いだせたことは非常に大きな成果であり、今後英文論文化をすすめていく方針である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
再現性を確認するのに十分なマウスの数(雄7匹、雌8匹、経産雌11匹、未経産雌5匹、合計31匹)のデータ収集を既に終えており、イメージング画像処理と反応ピーク分析、各領域での有意差検定を行っている段階である。当初の計画では3年間で論文化まで終える計画であったがそこまでは到達できておらず、やや遅れていると判断した。令和4年度末に1年間の研究期間延長を申請し承認されている。
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Strategy for Future Research Activity |
データ解析をすすめ、2023年5月に日本耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会学術講演会でポスター、口演発表を予定している。今後の研究の推進方策は、経産雌で左半球優位あることが分かったがどの亜領域が雄求愛歌の認識により重要な役割を担っているのか(より高次の中枢として機能しているのか)を解明していきたい。そのために亜領域をより精緻に同定できるThy1-GCaMP6f (GP5.5) 遺伝子導入マウスを用いて同様なイメージング実験を行うことを計画している。
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Causes of Carryover |
遺伝子改変マウスの導入は既になされており、動物舎の維持経費、繁殖飼育にかかる消耗品、遺伝子型を同定するPCR簡易抽出キットなどに使用する予定である。 国内学会の参加予定は2023年5月日本耳鼻咽喉科学会・頭頸部外科学会(福岡市 発表あり)、8月にNeuro2023(仙台市 情報収集)11月に日本耳科学会(高崎市 発表あり)となっており各々旅費の使用を予定している。 年度内の英文誌投稿料、英文校正料の支出を予定している。
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