2021 Fiscal Year Annual Research Report
高等哺乳動物における進化的なoRG獲得の分子機構の解明
Project/Area Number |
20K15898
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
松本 直之 金沢大学, 医学系, 協力研究員 (20774756)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 大脳皮質 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトなどの高等哺乳動物の発達した大脳皮質には、発達期に外側脳室下帯(OSVZ)と呼ばれる神経前駆細胞領域が存在する。このOSVZには外側放射状グリア(oRG)細胞と呼ばれる高等哺乳動物に特徴的な神経前駆細胞が存在しており、oRG細胞の進化的な増加が高等哺乳動物における大脳皮質の拡大及び高次脳機能の獲得基盤につながったと考えられている。そこで本研究では、OSVZなどといった発達した大脳皮質を持つ哺乳動物フェレットを突破口として、oRG細胞の分化制御の分子メカニズムの解明を目的とした。過去にヒトのoRG細胞に発現する遺伝子の網羅的な解析結果が報告されていた。そこで、公開されているこれらのデータベースを活用し、oRG細胞において発現が高い遺伝子群、そのなかでも特に細胞増殖・分化に関連する遺伝子に焦点を絞った結果、sonic hedgehog(Shh)シグナルがoRG細胞で活性化していることを見いだした。おもしろいことに、子宮内電気穿孔法を用いてフェレット大脳皮質でShhシグナルを活性化するとoRG細胞は増加し、逆に抑制するとoRG細胞が減少することを見いだした。さらにShhシグナルを活性化すると脳回が増加し、逆に抑制すると脳回形成が阻害されることを見いだした。マウスとフェレットの大脳皮質を比較したところ、フェレットの大脳皮質でShhシグナルがより強く活性化していた。この結果は、進化の過程で大脳皮質のShhシグナル活性が増加したことが脳回形成につながった可能性を示唆している。本研究で得られた成果は、高等哺乳動物に特徴的なoRGの分化制御機構や進化機構の解明といった神経科学への貢献のみならず、脳異常疾患の病態解明にも発展するなど社会的波及効果も大きい。
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