2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K15903
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
奥村 美紗子 広島大学, 統合生命科学研究科(理), 助教 (40806486)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 光受容体 / 光忌避行動 / 順遺伝学的スクリーニング / 線虫 |
Outline of Annual Research Achievements |
光は多くの種において重要な働きを担う.動物では主にロドプシンが光受容体として機能し光を感知している.線形動物(線虫)は目を持っておらず,光受容体であるオプシンもゲノム上に存在しないが,光に応答し忌避行動を示す.これは,光照射により線虫の寿命が短くなるなど,光は線虫にとって有害であるためである.Caenorhabditis elegansを用いた遺伝学的スクリーニングによって,LITE-1という新しいタイプの光受容体が同定された.LITE-1はC. elegansおよびその近縁種にしか存在せず,その他の線虫種がどのように光を感知しているかその分子機構は解明されていない.本研究では,進化生物学のモデルとして確立されてきた線虫Pristionchus pacificusを用いて,線虫がどのように光を感知しているか明らかにすることを目指した.P. pacificusはC. elegansの比較可能な遠縁種であり,ゲノム配列はすでに報告されている.CRISPR/Cas9法によるゲノム編集によって変異体の作製を行うことも可能である.本研究では,P. pacificusにおける光忌避行動のアッセイ系を確立し,P. pacificusは短波長の光に対して忌避行動を示すことを明らかにした.さらに化学変異原を用いた順遺伝学的スクリーニングを行い,光忌避行動を示さない変異体を5系統単離した.それらの変異体のゲノム配列の解読を行い,2系統の変異体については,原因遺伝子を同定することができた.これらの遺伝子は,C. elegansの光感知にも関与することが報告されており,スクリーニングが機能していることを示す.今後もスクリーニングを拡大し, P. pacificusにおける光受容体の同定を目指す.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
順遺伝学的スクリーニングを進めており,光に反応しない変異体の単離が進んでいる.2系統に関しては,原因遺伝子の同定が完了し,予定通り解析を進めている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後順遺伝学的スクリーニングを拡大し,より多くの変異体を単離する.得られた変異体の原因遺伝子を次世代シーケンサーおよび遺伝学的マッピングにより同定する.光受容体の候補については,蛋白精製を行うなどにより,光受容体であることを確認する.また変異を導入することにより,光感知に重要な配列の同定を行う.光感知に関わる遺伝子の発現パターンを明らかにし,光感知に関わる細胞の同定を行う.それにより線虫がどのように光を感知しているか明らかにする.
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