2021 Fiscal Year Annual Research Report
統合失調症モデルマウスの巨大なスパインが神経発火に与える非線形的効果の機序解明
Project/Area Number |
20K15908
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
白井 福寿 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, リサーチアソシエイト (20849038)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | シナプス / 2光子励起 / 神経発火 |
Outline of Annual Research Achievements |
統合失調症の病態生理にシナプス機能の障害が関与すると考えられているが、如何なるシナプス障害が重要であるのか、定量的にはほとんど明らかにされていない。シナプスが障害された場合に、樹状突起での演算処理や神経発火に対してどのような影響を及ぼすのかは全くの未解明である。申請者は、複数の統合失調症モデルマウスの前頭前野領域の比較検討を行い、これらの疾患モデルマウスでは共通して、巨大な樹状突起スパインが出現し、ワーキングメモリーが障害されている事を見出した。現時点でシナプス異常と行動との間の因果関係を示すことは困難であるため、本研究では神経細胞レベルに対象を絞り、スパインへの入力が樹状突起を介して神経発火を惹起するまでの過程の定量的な知見を蓄積したいと考えた。単一スパインを選択的に刺激する事の出来るグルタミン酸アンケージング法とカルシウムイメージング、電気生理学的手法を組み合わせ、スパインサイズが樹状突起演算機能および神経発火との関係性について形態学・機能学的に検証した。樹状突起スパインを複数同時期に活性化する事で神経発火を誘発することができるが、巨大なスパインは、通常よりも少数のスパイン数で発火が誘発で きた。中には、たった一つの巨大スパインの刺激により発火が誘発された例も観察された。また、巨大スパイン同士は近い距離に複数分布する(クラスタリング)傾向があり、クラスタリングした巨大スパイン群はより高頻度で発火を誘発した。以上から、巨大スパインは、通常のスパイン群と比較して数的・電気生理的(EPSPなど)により弱い刺激条件で神経発火を誘導する性質が示唆される。本年度は、薬理学的実験による作用機序に関する知見の他、この性質が異なる遺伝的背景を持つモデルマウスにおいても確認されることを見出した。
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