2021 Fiscal Year Research-status Report
Mechanistic analyses how arginine methylation drives cerebellar development
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20K15913
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
橋本 美涼 岐阜大学, 応用生物科学部, 助教 (80805424)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アルギニンメチル化 / PRMT1 / Shhシグナル / 小脳 / 脳発達 / 顆粒細胞 / ノックアウトマウス |
Outline of Annual Research Achievements |
小脳は、運動機能の中枢であるとともに認知機能や情動に関わることが知られつつある。小脳の発生は胎児期に始まるが、特に生後に起こる顆粒細胞前駆細胞(GCP)の活発な増殖により細胞数が増えることが小脳組織の構築やその後の機能発揮において非常に重要である。しかし、GCPの増殖を司る仕組みの全貌は未だ不明な点が多い。 GCPの増殖はShh(ソニックヘッジ・ホッグ)シグナル及び下流の転写因子群による制御が良く知られている。この転写因子群は様々な翻訳後修飾を受けているが、この修飾がGCP増殖に与える影響はよくわかっていない。申請者はこれまでに、脳特異的なアルギニンメチル化酵素・PRMT1の欠損が、GCP増殖異常を誘導し、マウス小脳形態を著しく乱すことを見出している。しかし、PRMT1のGCPにおける細胞自律的な制御は未解明であり、GCPでのメチル化基質やその詳細な機能制御は不明であった。そこで本研究では、①GCP特異的PRMT1欠損マウスの作製・解析、②GCP内メチル化基質同定・機能解析により、PRMT1が担う小脳発達制御の仕組みを解明することを目的とした。本研究から、PRMT1によるShhシグナル分子の修飾について明らかにすることを目指している。 本年度は、GCP特異的PRMT1欠損マウスの作製に成功したため、特に①について大きく進展した。PRMT1がGCPの増殖や生存に必須であること、さらにそれが小脳機能の発達の基盤の一部をも成していることを発見した。さらに、マウス小脳由来GCPの初代培養実験で、PRMT1欠損GCPでは増殖能・生存能・神経突起形成能が低下することがわかった。小脳におけるPRMT1機能解析について、今後の発展性が見込まれる結果を多く得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、小脳GCPの発達におけるPRMT1の機能解明に向け、①GCP特異的PRMT1欠損マウス(CKOマウス)の作製・解析及び②GCP内メチル化基質同定・機能解析を進めていく計画である。 本年度は、①について、GCP特異的PRMT1欠損マウス(CKOマウス)の作製に成功し、表現型解析を進めた結果、PRMT1がGCPの増殖や小脳機能に必須であることを発見した。とりわけ、CKOマウスは震えを示し、小脳機能の一つである運動機能に支障をきたす可能性が示唆された。また、マウス小脳由来GCPの初代培養で、PRMT1欠損GCPの増殖能・生存能・神経突起形成能を評価したところ、いずれも著しく低下していることを見出した。以上より、GCP増殖に対するPRMT1の細胞自律的な寄与のin vivoでの検証に成功した。 ②については、質量分析でのアルギニンメチル化の検出に難航しているが、これは脳内でのメチル化修飾を受けた基質量が極めて低いためであると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、PRMT1がGCPの増殖を細胞自律的に制御している可能性について、GCP特異的PRMT1欠損マウス(CKOマウス)の詳細な表現型解析を進め、小脳の発達においてPRMT1が寄与するポイントを絞っていく。 さらに、質量分析でのアルギニンメチル化の検出について、CKOマウスを用いた解析を進める。これまで、生後8日目の極めて小さい小脳を用いていたことがメチル化の検出に難航した原因だと考えられた。一方、今年度新たに作出したCKOマウスは成体まで生き延びることが判明したため、今後の質量分析にはこれまでより多くの組織量を供することができるとわかった。また同時に、初代GCP細胞や培養細胞株を用い、メチル化部位だと想定されるアルギニンの変異体を使ったアプローチも進めて行く予定である。 以上の計画を進めることで、PRMT1の小脳GCPでの機能制御について分子レベルでの解析を詰め、PRMT1による小脳発達制御の仕組みについて明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスによる影響でアメリカからの動物輸入遅延が生じたため、マウスの作出が1年遅れていた。それを想定せず当初の予定で、1年目に既に必要試薬等を入手していたため、本年度はそれらを使って解析を進めることができたために繰越金が生じた。
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Research Products
(2 results)