2021 Fiscal Year Research-status Report
視床下部神経系の軸索誘導・伸長機序の解明:マウスES細胞器官誘導系における検討
Project/Area Number |
20K15917
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
河田 美穂 藤田医科大学, 医学部, 助教 (90761601)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | マウス ES 細胞 / 視床下部 / 下垂体 / 軸索伸長 / 軸索ガイダンス |
Outline of Annual Research Achievements |
成体視床下部には神経幹細胞が存在しており、胎児期だけでなく成体脳においても新生ニューロンの軸索ガイダンス機構が働いていると想定されるが詳細は明らかになっていない。これまでの研究で、マウスES細胞から分化誘導した視床下部神経系はin vitro・in vivoの両方において内在性視床下部神経系と類似した性質を持つことが確認された。そこで本研究は、上記マウスES細胞器官誘導系を用いて視床下部神経系の軸索伸長メカニズムを解明することを目的とする。本年度は、マウス ES 細胞由来視床下部神経系に発現している軸索ガイダンス因子についてqPCRを用いて解析した。SFEBq法により分化誘導を行うと28日経過後には各種視床下部ホルモンマーカーの発現が認められる。そこで、誘導28日目のマウス ES 細胞を成熟ニューロン、それ以前 (今回は14日目) の細胞を未成熟ニューロンのサンプルとし、視床下部ニューロンが成熟する過程において機能する軸索ガイダンス因子の探索を行なった。ネトリンとそれらの受容体、セマフォリン・プレキシン・ニューロピリンファミリー 、Slit・Robo ファミリーの各種因子の発現を検討した結果、分化誘導日数14日目と比較して28日目で発現が上昇する因子、あるいは減少する因子のそれぞれを見出すことができた。まだ予備的な結果となるが、反発性因子の発現が変動しやすい傾向が見られた。今後はこれらの因子が発現する詳細な時期や発現部位を探索する。また今回の実験から、予想以上に多くの軸索ガイダンス因子が関与する可能性や他の因子群が関与する可能性が見出されたため、より網羅的な分子解析が必要であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
in vitroの系で視床下部神経系の軸索伸長に関与する軸索ガイダンス因子候補を見出すことができたが、これらの因子が実際の動物脳内視床下部神経系の軸索伸長に関与しているのか、 in vivoにおける知見が十分に得られていないため。また、今回検討した因子群以外にニューロンの軸索伸長に関与する新たな候補分子群IgCAMs(免疫グロブリンスーパーファミリーに属する細胞接着分子群)が浮上したが、それらの検討が実施できていないため。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)昨年度の実験結果で見出された軸索ガイダンス因子群が実際のマウス脳内視床下部神経系の軸索ガイダンスに関与するか検討する。特に、発現時期や発現部位の探索を行う。 (2) 昨年度検討した軸索ガイダンス因子群だけでは軸索伸長メカニズムの解明には不十分であることが明らかとなった。そこで、今後はバルクRNA-seqにより視床下部の軸索伸長に関与する因子の網羅的解析を行う。 (3) これまでの研究でマウス ES 細胞由来視床下部神経系をマウス脳内へ移植すると宿主の神経軸索に沿って移植細胞の軸索伸長が起こる可能性が示唆されている。こうした軸索-軸索相互作用にIgCAMsが関与することが知られている。そこで、これらIgCAMs群が視床下部神経系の軸索ガイダンスや伸長機構に関与するかを検討する。
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Causes of Carryover |
学会等がオンライン開催となり旅費の支出が発生しなかったため。また、いくつかの必要物品が納期未定となり購入を取消したため。これらの費用を前年度購入予定であった物品に使用すると共に網羅的分子解析に充てる予定である。
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Research Products
(1 results)