2021 Fiscal Year Research-status Report
視床後外側核における皮質下興奮性終末のシナプス構造とその由来
Project/Area Number |
20K15918
|
Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
中村 悠 久留米大学, 医学部, 助教 (70535484)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 後外側核 / LP / 視床 / ラット / 逆向性トレーサー / FluoroGold / VGluT2 / 遺伝子組換え実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請課題の目的は、視床後外側核 (lateral posterior nucleus, LP) へ投射する皮質下領域を同定し、更に、これらの皮質下神経終末が形成するシナプス構造を3次元的に解析することである。 光学顕微鏡レベルの実験として、まずはLP核の各亜核に興奮性終末を形成する皮質下ニューロンを同定するために、ラットLP核の外側部 (lateral portion of LP, LPl) または吻内側部 (rostromedial portion of LP, LPrm) に逆行性トレーサーであるFluorogold (FG) を注入した。現時点ではLP核が皮質下のどの領域から入力を受けているか分からないため、FGで逆行性標識された細胞体の分布を全脳レベルで解析している。 興奮性皮質下入力線維がLP核内で形成するシナプスの形態解析については、当初は抗体を用いた免疫電子顕微鏡観察法を用いる予定であった。しかし、本手法には膜構造や細胞内小器官等の詳細な構造が観察しにくくなるという問題点があった。そこで、抗体を用いずに電子顕微鏡観察を行うための、新しい遺伝子工学的神経標識ツールの開発に着手した。まずは複数のプラスミドに由来するDNA配列を、単一のプラスミドに組み込み、蛍光タンパク質を高発現させるプラスミドを作製した。神経系の培養細胞へプラスミドを導入したところ、従来の一般的なプラスミドに比べて高い発現量が得られた。引き続き、電子顕微鏡観察に必要な標識蛋白質の遺伝子を組み込み、開発を進めていく予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
皮質下興奮性神経終末のシナプス構造解析については、当初は抗体を用いた免疫電子顕微鏡観察法を用いる予定であったが、シナプスの膜構造や細胞内小器官等についても詳細に観察するために、新しい遺伝子工学的神経標識ツールを用いる方針に変更した。当該年度は、遺伝子組換えを行う際のPCR反応において、特定の塩基配列に関しては増幅が困難であり、その原因の解明と条件検討により想定以上の時間を要した。そのため、研究計画に変更及び遅れが生じている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後、引き続き逆行性トレーサーをLP核へ注入し、標識された細胞体の分布を全脳レベルで観察していく。LP核にVGluT2陽性終末を送る神経細胞の存在部位を絞り込むため、標識細胞体が観察された部位におけるVGluT2 mRNAの発現について、Web上のデータベース等を利用して確認する。VGluT2陽性細胞がいる領域については、FGで標識された細胞体で実際にVGlulT2のmRNAが検出されるかをin situ hybridizationにより検討する。 電子顕微鏡観察を行うための神経標識ツール開発については、まずは目的の塩基配列を適切に増幅させるPCR反応の条件を設定し、遺伝子組換え実験を進めていく。DNA配列の順序や組み合わせ等で有効性が期待できるコンストラクトを複数作製した後、神経系培養細胞株へ形質導入して発現量等を比較する。その後、最も効率よく標識できたコンストラクトを用いてウイルスベクターを作製する予定である。
|
Causes of Carryover |
本申請課題では、当初、抗体を用いた免疫電子顕微鏡観察法によりシナプスを解析する予定であったが、シナプスの膜構造や細胞内小器官等についても詳細に観察するために、新たな神経標識ツールの開発に着手した。新たに組込む塩基配列を増幅させるPCR反応に想定外の問題が生じ、次年度使用額が生じた。次年度はin situ hybridizationに必要な機器や、試薬、また、逆向性トレーサーの解析や神経標識ツールの新規開発に必要な消耗品等に使用する予定である。
|