2022 Fiscal Year Research-status Report
視床後外側核における皮質下興奮性終末のシナプス構造とその由来
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20K15918
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
中村 悠 久留米大学, 医学部, 助教 (70535484)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 後外側核 / LP / 視床 / ラット / 逆向性トレーサー / FluoroGold / 順行性トレーサー / 遺伝子組換実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請課題の目的は、視床後外側核 (lateral posterior nucleus, LP) へ投射する皮質下領域を同定し、更に、これらの皮質下神経終末が形成するシナプス構造を3次元的に解析することである。光学顕微鏡レベルの実験として、まずはLP核の各亜核に興奮性終末を形成する皮質下ニューロンを同定するために、ラットLP核の外側部 (lateral portion of LP, LPl) または吻内側部 (rostromedial portion of LP, LPrm) に逆行性トレーサーであるFluorogold (FG) を注入した。どちらの場合にも、視床網様核、外側膝状体腹側核、膝状体間葉、上丘表層に多くの神経細胞体が標識されていた。LPlにFGを注入した場合は、視蓋前域の前核とオリーブ核に標識細胞体が多く認められる傾向があった。一方、LPrmにFGを注入した場合、LPlに注入した場合に比べて、視蓋前域内側核、上丘深層、下丘外側皮質、小脳核、三叉神経脊髄路核中間部に標識された細胞体が分布していた。順行性トレーサーである、Bionitylated dextran amineを上丘深層、下丘外側皮質、小脳核へ注入したところ、標識軸索はLPlよりもLPrmに多く分布していた。これらの結果から、LPrm核は想定されていたような視覚情報だけでなく、より多感覚的な入力をより多く受け取る傾向があることが示唆された。これらの研究成果については、第128回日本解剖学会総会・全国学術集会にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
皮質下興奮性神経終末のシナプス構造解析については、当初は抗体を用いた免疫電子顕微鏡観察法を用いる予定であったが、シナプスの膜構造や細胞内小器官等についても詳細に観察するために、新しい遺伝子工学的神経標識ツールを用いる方針に変更した。当該年度は、遺伝子組換えを行う際のPCR反応において、特定の塩基配列に関しては増幅が困難であり、その原因の解明と条件検討により想定以上の時間を要した。また、光学顕微鏡を用いたLP核への入力解析において、神経回路標識に想定外のトラブルが生じたため、研究計画に変更及び遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、LP核への入力については、皮質下興奮性入力に加え、大脳皮質からの入力についても解析を行い、LP核への各脳領域からの入力の解析を進めていく。電子顕微鏡観察を行うための神経標識ツール開発については、まずは目的の塩基配列を適切に増幅させるPCR反応の条件を設定し、遺伝子組換え実験を進めていく。DNA配列の順序や組み合わせ等で有効性が期待できるコンストラクトを複数作製した後、神経系培養細胞株へ形質導入して発現量等を比較する。その後、最も効率よく標識できたコンストラクトを用いてウイルスベクターを作製する予定である。
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Causes of Carryover |
本申請課題では、当初、LP核への皮質下入力を対象に、抗体を用いた免疫電子顕微鏡観察法によりシナプスを解析する予定であったが、シナプスの膜構造や細胞内小器官等についても詳細に観察するために、新たな神経標識ツールの開発に着手した。その中で、新たに組込む塩基配列を増幅させるPCR反応に想定外の問題が生じ、次年度使用額が生じた。また、皮質下に加え、皮質からの興奮性入力についても解析を行う方針へ変更した。次年度は逆向性トレーサーの解析や神経標識ツールの新規開発に必要な消耗品、また、成果報告に必要な費用に研究費を使用する予定である。
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