2023 Fiscal Year Annual Research Report
視床後外側核における皮質下興奮性終末のシナプス構造とその由来
Project/Area Number |
20K15918
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
中村 悠 久留米大学, 医学部, 助教 (70535484)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 後外側核 / LP核 / 視床 / ラット / 逆行性トレーサー / Fluorogold / 視覚 / 視床枕核 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請課題の目的は、視覚系の視床核として知られる後外側核 (lateral posterior nucleus, LP) への皮質下入力様式を明らかにすることである。LP核の各亜核に神経終末を形成する皮質下ニューロンを同定するために、ラットLP核の外側部 (lateral portion of LP, LPl) または吻内側部 (rostromedial portion of LP, LPrm) に逆行性神経トレーサーであるFluorogold (FG) を注入した。LPrmから逆行性に標識されたニューロンの細胞体は、網膜と、間脳から延髄にかけての領域に分布していた。特に中脳の中脳水道周囲灰白質と上丘の深層で顕著な標識がみられた。これらの領域は、複数の感覚情報を扱う脳領域であり、生体の防御反応に関係することも知られている。本結果により、LPrmは視覚情報に限らず、複数の感覚情報や運動に関係する情報を取り扱い、生体の防衛にも関係することが示唆された。さらに、中脳では聴覚系領域である下丘に、延髄においては運動と関係する小脳や体性感覚を伝える三叉神経核でも逆行性の標識が観察された。また、脳幹網様体でも細胞体が多く標識されており、生体における様々な機能への関与が考えられる。一方、LPlにFGを注入すると、細胞体が標識されていた部位は網膜の他、視床や中脳視索前域における視覚関連領域の神経核であったが、小脳と延髄では標識は少なかった。本研究結果は、LPlがより視覚に特化した役割を担っているのに対して、LPrmは視覚だけでなく、複数の感覚や運動に関連した機能を有していることを示唆している。本研究は、視床における皮質下神経回路の理解を深め、感覚知覚や感覚運動統合に関連するメカニズムや障害の解明に貢献するものと期待される。現在、本研究結果を論文として投稿中である。
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