2020 Fiscal Year Research-status Report
自発的な運動開始に関与する皮質ー皮質下ネットワークの解明
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20K15927
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
寺田 晋一郎 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 助教 (40847274)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | システム神経科学 / 脳計測科学 / パーキンソン病 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は運動開始に伴う大脳皮質神経活動のメソスケールカルシウムイメージングを行った。本目的を遂行するため、大脳皮質の興奮性細胞におい て広く赤色変異型カルシウムプローブ(R-CaMP)を発現するトリプルトランスジェニックマウス(Emx1-cre; CaMKII-tTA; TIGRE-R-CaMP1.07)の機能評価から開始した。トリプルトランスジェニックマウスの頭蓋骨はレジンセメントにて半透明化し、経頭蓋骨でR-CaMPの蛍光を取得可能とした。上記状態とし頭部固定をしたマウスの背側大脳皮質全体を、広い視野(10x10mm^2)を持つ蛍光マクロ顕微鏡を用いて蛍光観察することで、前頭連合野・運動野・体性感覚野、頭頂連合野、視覚野、背側側聴覚野という主要な大脳皮質領域の神経活動を同時取得可能とした。 実際に生理的な神経活動をこの蛍光シグナルが反映しているかを明らかにするため、左右前肢それぞれに対して振動モーターを用いることで、感覚刺激を与え、その際の蛍光変化について評価したところ、左右前肢関連体性感覚領域における特異的な蛍光輝度変化が観察され、本実験系の妥当性を確認した。 次に、自発的なレバー引き課題(SI課題)および外発的なレバー引き課題(ET課題)を同一セッション内で行わせるSI-ET課題実施時の頭部固定マウスにおいて上記メソスケールカルシウムイメージングを実施した。本研究で用いたトリプルトランスジェニックマウスのプローブの発現は十分に高く、30分程度の連続的なイメージング時において褪色は観察されなかった。現在取得されたデータに対し、SI課題とET課題についての選択性を解析し、その差異について見ることで、単なる運動実行に関与する回路ではなく、自発的な運動開始に特異的に必要となる脳活動パターンを探索中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は予定ではファイバーフォトメトリーによる皮質下活動の取得を進める予定であったが、実験系の構築が進まず、そちらについては実施ができなかった。しかし、次年度に予定していた大脳皮質神経活動のマルチスケールカルシウムイメージングを先行して実施する形となったため、全体としての実験計画の進展速度は問題ないと考えられ、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
皮質下におけるドーパミンの変化について観察するためのファイバーフォトメトリー系の構築を進め、自発的運動開始に関与する皮質下ネットワークについての解明を進める。
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Causes of Carryover |
本年度に当初予定していたファイバーフォトメトリーの実験系を次年度へと繰越、先行して次年度に予定していたマルチスケールカルシウムイメージングを実施したため、ファイバーフォトメトリー装置の構築費用が差額として残り、次年度使用額が生じた。次年度使用額は当初の予定通りファイバーフォトメトリー装置の構築費用として使用する予定である。
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