2022 Fiscal Year Annual Research Report
自発的な運動開始に関与する皮質ー皮質下ネットワークの解明
Project/Area Number |
20K15927
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
寺田 晋一郎 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 助教 (40847274)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | システム神経科学 / 脳計測科学 / パーキンソン病 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は自らの意思に基づいて運動を開始することができる。この随意的な運動の開始に先立って生じる脳活動は、準備電位と呼ばれている。しかし、その発生機構に関してはまだ不明な点が多い。パーキンソン病患者は自発的な運動開始が困難であるものの、外発的な刺激に対しては比較的運動開始が容易であることが知られている。そのため、自発的と外発的な運動開始の比較により、自発的な運動開始における機能の解明が期待される。本研究では、両者を直接比較しながら、詳細な回路レベルでの機能を明らかにすることを目指して、頭部固定マウスにおいて自発的・外発的レバー引き課題を1つのセッション内で同時観察可能なシステムを構築した。2光子および1光子のマルチスケールカルシウムイメージングによって、運動野の高次領域に相当する二次運動野(M2)が運動開始信号の差異を強くコードすることを発見した。本年度は、薬理学と光遺伝学を用いて神経活動の抑制を行い、マウスのM2および一次運動野(M1)の課題への関与を詳細に調査した。その結果、M2およびM1の両領野の活動を常に抑制した場合、自発的および外発的な運動開始両方において成功数が減少した。一方、刺激タイミングを制御した光遺伝学的抑制によって運動開始後に一過的に活動を抑制した場合、M2への抑制では影響が見られず、M1への抑制のみにおいて自発的および外発的な運動開始両方における運動障害が引き起こされることが明らかとなった。M2における神経活動は自発的・外発的両方向に対する強い選択性を持っており、これらの結果はM2の両方向の選択性と一致している。また、運動開始後はM1においてのみ機能障害が見られた結果は、M2とM1という二つの運動野における階層的な運動情報処理機構の存在を示唆しており、両脳領域を介した運動開始信号の処理機構の一端が明らかとなった。
|