2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K15928
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
松田 隆志 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 特任助教 (90803065)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 脳弓下器官 / 血圧制御 / アンジオテンシンII / カルシウムイメージング / オプトジェネティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
脳は常に体液状態を監視しており、必要に応じて血圧や水分・塩分欲求、尿量を制御している。体液中のアンジオテンシンII(Ang II)は脳に作用することで血圧の上昇および水分・塩分欲求、利尿機能を亢進させ、体液恒常性を維持させる機能を持つ。血液-脳関門が欠損した感覚性脳室周囲器官である脳弓下器官(SFO)および終板脈管器官(OVLT)には、Ang IIの受容体であるAT1aが神経細胞に多く発現している。 本研究では、SFOにおけるAT1a陽性神経細胞による血圧制御機構の解析を進めている。AT1a陽性細胞にCreリコンビナーゼが発現している遺伝子改変マウス(AT1a-Creマウス)のSFOにCre依存的にChR2-EYFPを導入できるアデノ随伴性ウイルス (AAV-DIO-ChR2-EYFP)を感染させた。蛍光タンパク質EYFPにより神経軸索を可視化することで、SFOのAT1a陽性神経細胞の投射先を解析した。その結果、このAT1a陽性神経細胞が視床下部の複数の神経核に投射していることが明らかになった。さらに投射先の一つの神経核に青色光を照射してAT1a陽性神経細胞を神経路選択的に活性化させたところ、マウスの血圧が光刺激に応答して上昇することを確認した。 一方で、SFOのAT1aを特異的に欠損させたマウスを作成して脳室内にAng IIを投与したところ、Ang IIの昇圧作用は完全には減弱しなかった。このことから、Ang IIはSFO以外の神経核に対しても作用することが示唆された。今後、SFOに加えてこの神経核の血圧制御機構についても解析を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言によって、申請者の所属する東京工業大学では出校制限(2020年4月~6月)が実施された。そのため、この期間中にマウスの繁殖などが十分に出来ず、当初予定していた計画の進捗に遅れが出た。しかしながら、現在はその状況を脱しつつあり、遅れを取り戻しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
SFOとは異なるAT1aを発現している神経核においても解析を進める。具体的には、Cre依存的にAT1aを欠損させることが出来るAT1a-floxマウスを用いて、AT1aを神経核特異的にノックアウトさせる。これにより、Ang IIがSFOの他のどの神経核に作用しているのか検討する。 さらに、Ang IIと同様に血圧上昇を引き起こすNa+シグナルとの相互作用について解析を進める。申請者が所属する研究室では、食塩の過剰摂取による体液Na+濃度の増加をOVLTのグリア細胞が感知し、同じ神経核の神経細胞の活動を活性化することで血圧の上昇を誘導する仕組みを既に明らかにしている(Nomura et al., Neuron, 2019)。SFOやOVLT、あるいはSFOのAT1a陽性神経細胞の投射先である視床下部においてウイルスベクターを用いてカルシウムインジケーターであるGCaMP6fを発現させ、In vivoにおける神経活動を単一細胞レベルで観察する。Ang IIおよびNa+シグナルを組み合わせて刺激した場合に、これらの神経核の神経活動がどのように変化するのか検討することで、Ang IIとNa+シグナルが異なる神経細胞によって伝達されるのか、同一の神経細胞が伝達しているのか明らかにする。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響により、当初、本年度に予定していた実験の一部が実施できなかった。そのため、支給された助成金の一部を繰り越すこととなった。しかしながら、このままの状況が続けば本来の研究計画を進め、これまでの遅れを取り戻すことが出来ると考えているため、研究計画の方針変更は行っていない。そのため、繰り越した助成金と翌年度の助成金はそれぞれ当初の計画に沿って使用する予定である。
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