2020 Fiscal Year Research-status Report
げっ歯類の大脳皮質における左右前肢運動の制御回路機構の解明
Project/Area Number |
20K15934
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
相馬 祥吾 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00723256)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 左右前肢運動 / 独立運動 / 協調運動 / 運動野 / 頭頂連合野 |
Outline of Annual Research Achievements |
左右の手を協調的に使うことは日常生活では欠かせないが、左右前肢の独立・協調運動の神経基盤の全容は未解明のままである。霊長類の先行研究により、一次運動野や高次運動野の協調運動における役割が異なることが知られている。例えば、運動前野や補足運動野の神経細胞は両側性に(対側・同側ともに)前肢の運動を表現する一方、大脳皮質の最終出力の場である一次運動野の神経細胞は対側の情報表現を行う。また、高次運動野を傷害したサルでは協調運動が実行できなくなることから、高次運動野が協調運動に重要な役割を果たしていることが示唆されてきたが、各運動野内の種々の神経細胞、また、複数の運動野同士がどのように相互作用し、独立・協調運動を制御しているのかは未解明のままである。この点を明らかにするためには、神経回路・細胞の種類を同定、さらには、その神経活動を操作可能である最先端技術(遺伝子改変動物・光遺伝学・化学遺伝学など)を利用できるげっ歯類による研究が最適であるが、これまでげっ歯類の前肢左右の独立・協調運動について研究されてこなかった。その主な理由としては、げっ歯類の多くの研究は自由行動下で行われてきたため、左右前肢の動きを独立して観察・制御することが難しく、独立・協調運動を定量的に解析することが困難であったためである。従って、本研究では、げっ歯類において協調運動の基盤となる独立運動を定量的に解析可能な行動実験装置を利用し、神経活動記録に光遺伝学の技術を導入することで、独立運動の制御機構を神経回路レベルで解明することを目指す。また、神経活動を光操作することで、独立運動の制御を担うと推定された領野や神経回路の活動の因果性についても検証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者の研究から、これまでに霊長類と同様にげっ歯類の運動野・運動関連領野においても対側性・両側性の情報を表現することが明らかとなってきた。本研究で採用している左右ペダル課題では、動物が自発的にレバーを操作する必要がある。また、課題には報酬提示のレバーを教示する外部刺激が無いことから動物は自身でどちらのペダルを操作するかを過去の記憶情報に基づいて判断しなければならない。このような「どちらの手を動かすのか」という内発的な情報が海馬・内側嗅内野で表現されていることを明らかにしつつある。このように運動を計画し、発現するための情報処理が異なる領野間でなされることが明らかになってきたが、今後は、このような情報が神経細胞種・神経回路特異的にどのように処理されているかを明らかにする予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
申請者の研究により大脳皮質領野間での左右前肢の独立運動の機能的差異は明らかになってきたが、左右の前肢運動の制御回路機構を解明するためには、よりミクロレベルでの実験が必要である。そのために、光遺伝学により神経細胞の種類や神経回路の同定を行った上で実験を実施する予定である。興奮性細胞・抑制性細胞に光駆動性陽イオンチャネルを発現する動物は導入済みであるため、今後はそれら利用し、興奮性と抑制性シグナルのバランスが左右前肢運動にどのように寄与しているかを検討する予定である。
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