2021 Fiscal Year Research-status Report
脳梗塞巣に自己再生する幹細胞(iSCs)の性質と発生機序の解明研究
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20K15938
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
佐久間 理香 関西学院大学, 生命環境学部, 助教 (90780180)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ペリサイト / Nrf2 / 酸化ストレス / 多能性幹細胞 / 低酸素-再酸素負荷 / ROS |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は、酸化ストレスに応答して発現が増加する抗酸化因子Nrf2がペリサイトに与える影響について検討した。 まず、梗塞脳に免疫蛍光染色を施したところ、梗塞後のペリサイトにて活性酸素種(ROS)やNrf2が増加しており、反対側にはほとんど発現していないことが判明した。また、マウス大脳皮質から単離したペリサイトに低酸素負荷の後、再酸素負荷を加えると核内Nrf2が増加し、幹細胞マーカーが見られていた。また、再酸素化を加えることでミトコンドリアが活性化していることが判明した。 これらの知見より、梗塞によってペリサイトから活性酸素が産生されて酸化ストレスが起こり、Nrf2が発現することで幹細胞化が進むのではないかと考えられた。 さらに、Nrf2を過剰発現させると神経幹細胞マーカーだけでなく接着因子が増加した。また、Nrf2過剰発現ペリサイトを浮遊培養にて培養するとスフェロイドの形成が促進され、神経誘導培地にて培養するとTuj1陽性神経細胞への分化がみられた。このことからも、先に述べた仮説を裏付けるデータを得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究により虚血環境におけるペリサイト幹細胞化メカニズムに関わる因子を特定し、リプログラミング現象の一端を解明することができた。本研究結果は国際雑誌への掲載が決定している。(Sakuma R, et al., Brain pericytes acquire stemness via the Nrf2-dependent antioxidant system. Stem cells, in press)
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り他の組織からペリサイトを単離し同様に幹細胞化が起こるかどうか、脳ペリサイトとの発現因子を比較することを予定しているが、申請者は2022年度に兵庫医科大学に移ることが決定しており、(現在、動物実験計画書の変更申請中ではあるが)脳梗塞モデル作製手術を実施できることから、梗塞3日目以前の梗塞脳を取り出し発現因子を比較検討することが可能になる。そのため、虚血によりペリサイトから幹細胞に至るまでROSやNrf2の発現がどのような変化を辿っているかを経時的に検討することも考えている。また、ペリサイト幹細胞化に至るまでのNrf2発現経路についても検討したい。
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