2022 Fiscal Year Annual Research Report
脳梗塞巣に自己再生する幹細胞(iSCs)の性質と発生機序の解明研究
Project/Area Number |
20K15938
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Research Institution | Hyogo Medical University |
Principal Investigator |
佐久間 理香 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (90780180)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ペリサイト / Nrf2 / 酸化ストレス / 幹細胞化 / 低酸素-再酸素負荷 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究期間全体を通じて得られた成果は、梗塞によってペリサイトから活性酸素が産生されて酸化ストレスが起こり、抗酸化因子Nrf2が発現することで幹細胞化が進んでいることが明らかになったことである。まず、梗塞脳に免疫蛍光染色を施したところ、梗塞後のペリサイトにて活性酸素種(ROS)やNrf2が増加しており、反対側にはほとんど発現していないことが判明した。そこで、正常脳マウスの大脳皮質より単離したペリサイトと、虚血脳から単離した虚血誘導性多能性幹細胞(iSC)においてNrf2の発現を比較したところ、iSCの核内にてNrf2が高発現していることが判明した。また、正常脳ペリサイトにNrf2を過剰発現させると、神経幹細胞マーカーだけでなく接着因子が増加した。さらに、Nrf2過剰発現ペリサイトを浮遊培養にて培養するとスフェロイドの形成が促進され、神経誘導培地にて培養するとTuj1陽性神経細胞への分化がみられた。これらの成果については原著論文として発表した(Stem Cells, 2022)。 次の目標は、ペリサイト幹細胞化に関わるNrf2活性化経路を特定し、将来的に新規治療法を開発するための基礎的なデータを得ることである。令和4年度は兵庫医科大学へ異動したことから、実験の立ち上げと再現性の確認を行いながらデータの収集に専念した。脳梗塞モデルマウスを作製し、梗塞内に幹細胞マーカーが高発現する3日目までにROS、リン酸化Nrf2の発現変化を経時的に観察したところ、梗塞後12時間からROSが産生され、1日目から脳軟膜にリン酸化Nrf2が強発現することが判明した。また、ペリサイトとiSCの比較において、iSCの核内にリン酸化Nrf2が強く発現していた。このことから、Nrf2活性化経路にはリン酸化が関わっていると考えられたことから、今後Nrf2リン酸化経路に絞って解明を進める予定である。
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