2020 Fiscal Year Research-status Report
ゼブラフィッシュの予測に基づいた意思決定における大脳皮質-基底核回路の機能の解明
Project/Area Number |
20K15942
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
谷本 悠生 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, 基礎科学特別研究員 (80815184)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ゼブラフィッシュ / カルシウムイメージング / 意思決定 / 大脳基底核 |
Outline of Annual Research Achievements |
動物は絶えず変化する周囲の状況に応じて適切な意思決定を行う。これまで意思決定においては、過去の経験依存的に適切な行動が引き起こされる仕組みが研究されてきた。一方、動物は未知の状況においても到達すべき状況を予測し、適切な行動を選択する。この予測に基づいた意思決定は、我々ヒトの精神活動においても根幹をなす脳機能の一つであるが、そのメカニズムは不明な点が多い。本研究では、ゼブラフィッシュのコンパクトな大脳皮質-基底核回路を活かして、予測に基づいた意思決定中の神経活動を計測・操作し、予測情報が統合され適切な行動に反映される神経回路機構の解明を目指す。これまでの結果から、ゼブラフィッシュの淡蒼球内節に相当する細胞から大脳皮質への情報出力において、周囲の状況の危険度の予測情報が伝達されていることが既に判明していた。該当年度においては、この淡蒼球内節に相当する細胞の活動を制御している上流の神経核と考えられる、線条体の直接路・間接路細胞が仮想空間でのGo/No-go課題学習中にどのような活動を示すかをカルシウムイメージングにより計測した。このタスクでは、ゼブラフィッシュは仮想空間において青色領域に留まると電気ショックによる罰を受け、赤色領域に留まると罰を免れるという経験を繰り返すと、そのルールを学習して青色領域に置かれると事前に赤色領域へと回避するようになる。線条体は終脳の深い部分にあり、これまでは麻酔下で頭蓋骨を取り除かなければイメージングできなかったが、より強く遺伝的カルシウム指示薬を発現する系統を作成し頭蓋骨とイメージング面を水平に撮影することで、仮想空間において学習中の線条体活動の計測を可能にした。以上の成果により、ゼブラフィッシュの線条体の学習中の活動パターンの変化を初めて計測することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脚内核の特徴的な活動パターンを引き起こす上流の神経核として、線条体の活動をカルシウムイメージングにより計測した。新規系統の作成や仮想空間下での固定条件の工夫により、学習中のゼブラフィッシュの線条体活動を継続的に計測できるようにした。以上の成果により、線条体の学習依存的な活動パターンの変化が明らかになり、研究は順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は申請内容に基づいて、脚内核-大脳皮質経路の神経活動を光遺伝学的に操作しながら、大脳皮質の神経細胞活動と行動の計測を行い、脚内核の活動が大脳皮質活動や意思決定に対してどのような影響を及ぼすかを解明する。さらに、ゼブラフィッシュの大脳基底核の各部位の神経接続の様式を明らかにするため、線条体―脚内核経路や脚内核―視床経路のトレーシング実験も行う。これらの生理学的・解剖学的研究により、線条体―脚内核経路が大脳皮質で表現される予測情報や意思決定に対してどのような影響を及ぼすかを解明する。
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Causes of Carryover |
コロナウイルスの感染拡大に伴い発令された緊急事態宣言に基づき、2020年4月から9月までの間、所属研究機関での研究活動が制限されていた。そのため、一部計画していた予算の執行を延期することとした。2020年度に実施できなかった研究計画は翌年度に繰り越して、もともと2021年度に予定していた研究計画とともに、2021年度中に実施する計画である。
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