2020 Fiscal Year Research-status Report
Phototriggered Transformation of Carboxylic Acids Using Cyclopropenones
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20K15953
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
三代 憲司 金沢大学, 新学術創成研究機構, 准教授 (60776079)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 光化学 / シクロプロペノン / 光触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではシクロプロペノンの光反応を利用して、任意のタイミングで任意の場所にある特定のカルボン酸を化学修飾する手法の開発を目指して研究を行った。研究開始時までに申請者はアミノシクロプロペノンの光反応を利用するカルボン酸の化学修飾法の開発に成功していたが、本手法は紫外光に弱い基質共存下、酸化還元されやすい基質の共存下、酸素雰囲気下等の条件では困難であるという課題があった。本課題を解決すべく、初年度はアミノシクロプロペノンの置換基の検討、最適化により、より反応条件の制限の少ない、汎用性の高い反応剤の開発を試みた。 検討の結果、ベンゾチオフェンの3位に置換したシクロプロペノンが光触媒/可視光を用いる温和な反応条件下で極めて効率的に脱カルボニル化反応を起こし、高反応性のイナミンを生成することを見出した。アミンとカルボン酸共存下でイナミンを生成すると、イナミンは即座にアミンとカルボン酸の脱水縮合を引き起こしアミドを高収率で生成した。本反応は紫外光に弱い基質や酸化還元に弱い基質が共存する状態でも効率よく進行し、光触媒反応が阻害されやすい酸素雰囲気下でも反応は効率的に進行した。 触媒の物性と活性の相関の解析、Cyclic Voltammetry解析、Stern-Volmer消光実験等から、従来開発してきたフェニル置換基をもつアミノシクロプロペノンの光触媒反応はフォトレドックス機構で進行するのに対し、今回開発したベンゾチオフェン置換基をもつシクロプロペノンは三重項エネルギー移動機構で進行することが示唆された。 本成果はThe Journal of Organic Chemistry 86, 3625-3636 (2021)に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度では、紫外光に弱い化合物や酸化還元に弱い化合物の共存下及び酸素雰囲気下での反応という、一般的に光反応では困難とされる条件での反応の実現というチャレンジングな課題に取り組んだが、化合物を適切に設計、合成、反応検討を行った結果、非常に効率よく反応が進行する条件を確立することに成功した。また、その成果はThe Journal of Organic Chemistry誌に掲載された。 本反応開発において見出した、フォトレドックス機構と三重項エネルギー移動機構が置換基によって切り替わる例は現在までに殆ど報告がないが、申請者の実験結果から、このようなメカニズムの切り替えは光触媒反応の効率を飛躍的に向上させる可能性をもつことが示唆された。今回得られた知見はシクロプロペノンの光反応だけでなく、他の様々な光反応の効率改善にもつながると期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度は可視光条件下、空気中という非常に温和な条件で高反応性のイナミンを発生、利用する方法の確立に成功した。二年目は初年度の成果を活かし、イナミンを利用するさらに様々な反応開発に取り組む。 また、初年度見出した、シクロプロペノンの光触媒的脱カルボニル化反応がフォトレドックス機構と三重項エネルギー移動機構の両方で進行し、それらの寄与が置換基により異なるという現象は既存の光反応で殆ど報告がなく、その現象を光触媒反応の効率改善に活かした例は皆無である。現在までに行ったメカニズム解析はシクロプロペノンや触媒の構造と反応性、物性の相関の実験的な解析が主であったが、より詳細を明らかにすべく、二年目は理論計算の実施によりどのような理由でメカニズムが切り替わるのか、反応効率を最大化するためにはどのような構造が最適であるかの解明を目指す。 さらに、アミノシクロプロペノンだけでなく、さらに様々な置換基をもつシクロプロペノンからの高反応性アルキン生成、及び高反応性アルキンを利用した化学反応の開発を引き続き行っていく。
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Causes of Carryover |
初年度は新型コロナウイルスの影響があり、4-6月は全く関連する実験が行えなかったこと、学会参加の出張がすべて中止又はオンライン開催になり出張費を必要としなかったことから、物品費、旅費が予定額より大幅に減少した。また、研究に参加する人員の都合上、2年目から研究に参加する人員が増える予定となったため、1年目は全体的に支出を抑え、2年目により大規模に研究を展開するための予備的な実験を行った。 2年目は関連研究に参加する人員が2人から4人に増え、初年度に得られた知見からより大規模に研究を展開するため、物品費が大幅に増加する予定である。
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Research Products
(1 results)