2020 Fiscal Year Research-status Report
非天然型ペプチド合成を目指した高化学選択的脱炭酸反応の開発
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20K15954
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
南條 毅 京都大学, 薬学研究科, 助教 (30817268)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | チオアミド / チオエステル / α-ケト酸 / ペプチド / 不斉付加反応 / デヒドロアミノ酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はα-ケト酸を用いた脱炭酸型分子変換の開発を進めるとともに、ペプチド類縁体合成に応用する際の原料となるβ-アミノ-α-ケト酸の供給法についても検討を行った。まず脱炭酸型チオアミド化反応について反応機構解明を目的とした対称実験等を種々行ったが、その中で単体硫黄とチオールを用いる従来の最適反応条件以外にも室温下良好にチオアミドを与える硫黄試薬をいくつか見出した。本知見は反応活性種が当初想定していたヒドロポリスルフィドではない可能性も示唆しており、今後さらなる精査を行うとともに、エピメリ化の抑制が課題となっていたチオアミド含有ペプチド合成への応用にも活かす予定である。なお本検討の過程で、可視光レドックス反応条件下、単体硫黄を用いた脱炭酸型チオエステル化が良好に進行することも見出し、現在基質一般性や反応機構解析を進めている。加えて、β-アミノ-α-ケト酸等価体を与える不斉Mannich反応について触媒の再スクリーニングを実施し、幅広い基質に対して高立体選択的に目的物を与える反応条件を見出した。本知見を活かして、生物活性を有するケトアミド含有オリゴペプチドの合成に成功するとともに、合成したペプチドケト酸を用いたペプチドフラグメントカップリングも実践した。 さらに筆者らはアミドのN-クロロ化を経由するペプチドの新規化学修飾法について検討を行い、非天然型アミノ酸の一種であるデヒドロアミノ酸を含有するペプチドの新規合成法に利用できることを見出した。従来法と異なり、天然型アミノ酸残基のみからなるペプチドに対して利用できる本手法は、多彩な生物活性が見られるオリゴペプチドの構造活性相関研究において強力なツールとなることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
α-ケト酸を用いた脱炭酸反応について、チオアミド化の反応活性種に関する知見を得るとともに、当初検討予定になかったチオエステル化反応が良好に進行することも新たに見出した。また、キラルβ-アミノ-α-ケト酸の供給法についても検討を重ね、非天然型側鎖を含む様々なアミノ酸残基に対応できる方法論として確立した。さらに、アミドのN-クロロ化を経由するペプチドの新規化学修飾法についても初期的知見を得ており、これらの成果は当初の計画以上のものであると考えている。一方で、脱炭酸型セレノアミド化反応についてはごく少量目的物が得られたものの、依然反応条件最適化検討の途中である。以上の結果を総合すると、コロナ下で研究活動が制限された時期もあったが、概ね順調に進展したと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
新しく見出したチオアミド化の反応条件を用いてチオアミド含有ペプチド合成におけるエピメリ化の抑制を図る。またチオエステル化についても基質適用範囲や反応機構について精査するとともに、合成法を確立したβ-アミノ-α-ケト酸を用いたペプチドのフラグメントカップリングの一般性についても検討していく予定である。 さらにペプチド中に多く含まれるアミドのN-クロロ化が円滑に進行することを利用して、ペプチドの位置選択的修飾法の開発を行う。具体的には、①N-クロロ化の位置選択性の制御、②N-クロロ体の新規変換法の発見、の2点を目指して今後検討を進める。
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Causes of Carryover |
当初の支出予定額と大きな差異が生じた項目は物品費と旅費であるが、物品費に関してはコロナ禍で研究活動を一時制限する必要が生じ、検討に必要な試薬で未購入のものが多くあったためである。これらの試薬は今後検討が進めば必ず必要となるものであり、次年度での購入費用に充てる予定である。また、旅費に関しても多くの学会が中止、オンライン開催となったため本年度は必要無くなったが、次年度は積極的に発表予定であり、その旅費に充てるとともに、引き続きオンライン開催となり旅費が不要となった場合は不足している物品の購入費に充てる。
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Research Products
(8 results)