2020 Fiscal Year Research-status Report
抗潜在性結核菌活性を有するピロロインドール類の創生
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20K15956
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
君嶋 敦 大阪大学, 薬学研究科, 特任助教 (20812134)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 全合成 / 天然物化学 / 酸化的カップリング反応 / 酸化的環化反応 / 低酸素環境 / 潜在性結核菌 / 抗菌活性 / 真菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、海洋由来微生物の培養抽出エキスを用いて抗潜在性結核物質のスクリーニングを行なった結果、Trichoderma sp.の培養抽出物から、潜在状態を誘導したM.bovis BCG(結核菌と相同性の高いMycobacteria属)に対して新規抗菌活性を示す、verticillin AおよびBを単離、同定した。これらの天然物はピロロインドールとジチオジケトピペラジンとが縮環し、さらにそれらが二量化した極めて複雑かつ独特な化学構造を有しており、未だにその合成の報告はない。また、多くの類縁体が報告されていながら、その抗潜在性菌活性と化学構造との相関性は未だに明らかになっていない。そのため、新規医薬品シードの創出という観点から、verticillin類の構造活性相関および作用機序の解明を指向した効率かつ網羅的合成の検討を行うこととした。 verticillin類の合成に向けて、当初想定していたテザーを用いたトリプトファン誘導体の酸化的環化二量化反応による二量化ピロロインドール骨格構築の検討を目指して研究を行った。しかし、トリプトファンのβ位に水酸基を有する基質の合成検討の結果、立体選択的な水酸基の導入には課題を残す結果となっている。一方で、その検討過程でトリプトファン誘導体の新たな酸化的環化反応を見出し、新規ピロロインドール骨格構築法を開発するに至った。また本反応に着想を得、ピロロインドールの新たな酸化的二量化反応の開発へ展開することで、予備的な実験結果ではあるが、その有用性を確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、テザーを用いた酸化的ピロロインドール二量化反応の開発とそのverticillin類合成への展開を予定していたが、本二量化反応の基質合成において、トリプトファンβ位への立体選択的な水酸基の導入に課題を残す結果となった。一方で、基質合成の検討過程でトリプトファンの新規酸化的環化反応を見出し、ピロロインドール類の新たな構築法の開発を達成した。本反応を用いることで、verticillin類の単量体アナログの効率的な合成が期待できる。さらに、本反応に着想を得ることで、新たな酸化的ピロロインドールの二量化反応の開発検討へ展開し、トリプタミンおよびトリプトファン誘導からピロロインドール骨格構築と二量化を一挙に達成する実験結果を得ている。これらの知見は、verticillin AおよびBの合成だけでなくその類縁体の合成への展開も期待できる点において注目に値する。以上より、本研究の進行状況は概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
新たに見出したトリプトファンおよびトリプタミン誘導体の環化反応を基盤として、構造活性相関研究を指向したverticillin類の単量体アナログを合成する。また、同様にして見出した酸化的ピロロインドール二量化反応を用いることで、verticillin類を含む二量化ピロロインドールアルカロイドの合成へと展開する。verticillin AおよびBの合成で課題となる,11および11’位への水酸基の立体選択的導入においては、当初は合成序盤で行うことを予定していたが、基質合成で課題を残す結果となっているため、ピロロインドール骨格構築後にその構造の特性を利用して対応する水酸基を立体選択的に導入するルートも視野に入れ合成研究を進める。
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