2020 Fiscal Year Research-status Report
ドウモイ酸の合成を基盤とする新規カイニン酸受容体制御分子の創製
Project/Area Number |
20K15958
|
Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
大内 仁志 静岡県立大学, 薬学部, 助教 (70798842)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 全合成 / カイノイド / ドウモイ酸 / カイニン酸受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
カイニン酸受容体は脳における神経細胞の興奮やシナプス伝達を調節する役割を担っている。そのため関連する神経疾患の研究や医療薬開発において本受容体に選択的な薬剤は重要であるが、その数は非常に限られている。一方、ジエン構造を分子内に持つカイニン酸誘導体であるドウモイ酸はこの受容体に対し特徴的な活性化様式を示すことが知られているため、ドウモイ酸を基盤とすることで新たなカイニン酸受容体の制御分子創製が期待できる。本研究では、構造活性相関研究への誘導体供給も視野に入れたドウモイ酸の新たな合成法を確立し、新たな活性化様式を持ったカイニン酸受容体の制御分子を見出すことを計画した。ドウモイ酸の主骨格であるピロリジン環上に存在する3つの連続する不斉炭素のうち、cis型となる 3, 4 位の立体化学は 5 員環形成後に構築することは困難であることが類縁化合物の合成研究において知られている。従ってこの2つの立体化学の構築は環形成に先立ち、光学活性アルコールからの不斉転写反応を用いて行った。またドウモイ酸やその誘導体を効率的に得るためには、合成の終盤において様々なジエン側鎖部位を導入可能であり、かつジエン構造を完全な幾何選択性で構築する方法の確立が必要となる。このジエンのうち三置換Zオレフィンの構築については、不飽和ラクタムを経由することにより完全な選択性での構築を達成した。またもう一方のオレフィンについては、不飽和ラクタムの還元的開環とピロリジン環の構築後にJulia-Kociensky 反応によってE体選択的に構築し、ドウモイ酸の主骨格を構築する方法を確立した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書に記載した初年度の計画通り、ドウモイ酸の新規合成ルートの開発を行なった。光学活性アリルアルコールからの不斉転写による不斉炭素の構築と不飽和ラクタムを経由した三置換Zオレフィンの構築は概ね予想通りに進行し、ジエン構造についてもJulia-Kociensky 反応により構築した。合成最終段階における保護基の除去の段階で塩基によりエステルα位の異性化が進行し収率の低下が見られるものの、ドウモイ酸を得ることに成功していることから、計画通り順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
ドウモイ酸の合成を現時点で達成しているものの、その収率は化合物の量的供給を行うためには不十分である。そのため今年度の結果を基盤としてドウモイ酸の合成ルートについて最適化を行う。特に、最終段階における異性化を回避するためにエステル保護基の変更も視野に入れた反応条件の詳細な検討を行う。また、Julia-Kociensky 反応により様々な4位側鎖を持つ類縁体を合成して生物活性試験に提供し、グルタミン酸受容体に対する作用の評価を行う。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの流行による研究室の閉鎖があり研究期間が短縮されたことに加え、学会がオンライン開催へと移行したため旅費が不要になったことで次年度使用額が生じた。翌年度分として請求した助成金と合わせて、研究遂行に必要となる有機合成用試薬の購入代金として使用する計画である。
|