2022 Fiscal Year Research-status Report
ヒストン脱アセチル化酵素に対するアロステリック型タンパク質間相互作用阻害薬の解析
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20K15959
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
鈴木 美紀 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (00628753)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | エピジェネティクス / HDAC / アロステリック作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、現在、induced-fit作用型 (アロステリック作用型) による HDAC阻害作用を有する新規の化合物(HDAC阻害薬)の詳細な解析に取り組んでいる。この化合物は、従来のHDAC阻害薬と比較して強い細胞増殖阻害作用を有することがわかっているが、この強い細胞増殖阻害作用は、「induced-fit作用によって誘起されるHDACの構造変化が、HDACと転写因子の相互作用阻害を引き起こすことで、HDAC活性に加え転写因子にも影響を与え、その結果、強い細胞増殖阻害に至る」との仮説のもと、検証を行っているところである。 これまでに、我々は、当該HDAC阻害薬により、HDACとの相互作用が阻害される転写因子を同定した。また、当該HDAC阻害薬が、オートファジーによる細胞死を誘導することも確認した。 本年度は、当該HDAC阻害薬が、アポトーシス及びオートファジーの開始を制御するBcl-X遺伝子のmRNAのスプライシングパターンを変化させることを新たに特定した。より具体的には、当該HDAC阻害薬とInduced-fit作用を示さない当該HDAC阻害薬類似体とを、それぞれ乳がん細胞に投与して比較したところ、当該HDAC阻害薬投与では、類似体投与の場合と比較して、Bcl-XS(短鎖型)に対するBcl-XL(長鎖型)のmRNA量比(Bcl-XL/S比)が8倍程度減少していた。Bcl-XLはアポトーシスの開始を負に制御しているが、Bcl-Xのスプライシングパターンが変化し、Bcl-XSの合成量が多くなってBcl-XL/S比が減少すると、アポトーシスの開始が誘導されることが報告されている。したがって、当該HDAC阻害薬は、従来のHDAC阻害薬に比較して強い細胞増殖阻害効果を示すのであるが、当該HDAC阻害薬は、HDAC活性阻害効果に加え、スプライシング機構にも影響を与えBcl-XL/S 比を減少させることで、従来よりも強い細胞増殖阻害効果を示すのであろうことが推測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述の通り、当該HDAC阻害薬のinduced-fit作用の標的の特定に至っており、研究はおおむね順調に進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究を進めていく上で着目する因子、作用するメカニズムの大筋を特定できたため、実験計画自体に大幅な変更は無く、今後当初の予定通りに進めていきたいと考えている。
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