2023 Fiscal Year Annual Research Report
ヒストン脱アセチル化酵素に対するアロステリック型タンパク質間相互作用阻害薬の解析
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20K15959
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
鈴木 美紀 京都大学, 工学研究科, 特定研究員 (00628753)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | エピジェネティクス / HDAC / アロステリック作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、induced-fit作用型 (アロステリック作用型) によるHDAC阻害作用を有する新規の化合物 (HDAC阻害薬) の詳細な解析に取り組んだ。この化合物は、従来のHDAC阻害薬と比較して、乳がん細胞に対して強い細胞増殖阻害作用を示すことがわかっているが、この強い細胞増殖阻害作用は、「induced-fit作用によって誘起されるHDACの構造変化が、HDACと転写因子との相互作用阻害を引き起こすことで、HDAC活性に加え転写因子にも影響を与え、その結果、強い細胞増殖阻害に至る」との仮説のもと、検証を行った。 我々は、まず、免疫沈降実験とプロテオミクス解析とを組み合わせ、当該阻害薬によって、HDACとの相互作用が阻害される転写因子を同定した。また、当該阻害薬を乳がん細胞に投与した後、網羅的な遺伝子発現解析を行うことで、当該阻害薬によってアポトーシス、およびオートファジー関連の遺伝子の発現が誘導されることを明らかにした。さらに、HDACと同転写因子はそれぞれスプライシングに関与すると報告されているが、当該阻害薬投与後、アポトーシスとオートファジーの開始を制御するBcl-X遺伝子のmRNAのスプライシングパターンが変化することを特定した。このスプライシングパターンの変化によって、両経路を介した細胞死が誘導されるのではないかと推測した。そして、本年度は、当該阻害薬の投与によって、乳がん細胞においてDNAの二本鎖切断量が増加することと、それに伴ってp53経路が活性化されることについても同定した。以上の結果から、研究期間全体を通じて、induced-fit作用型のHDAC阻害薬が有する作用機序の大筋について明らかにできたと考えている。
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