2021 Fiscal Year Research-status Report
医薬品構造としてのカルボラン実践応用に向けた基盤的研究
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20K15961
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Research Institution | Tohoku Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
皆瀬 麻子 東北医科薬科大学, 薬学部, 助教 (30710397)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | カルボラン / 代謝安定性 / 肝ミクロソーム / P糖タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はホウ素クラスターであるカルボランの医薬品構成要素としての可能性を探索することを目的としている。医薬品開発において活性化合物の薬物動態プロファイルは、開発後期での薬効不足や副作用発現によるドロップアウトを回避するため、開発初期段階から解明すべき要目である。現在までカルボラン化合物の動態プロファイルは調査された例が無く、本課題が開拓的研究となる。そこで動態に関する性質を網羅的に評価するのではなく、CYP含有肝ミクロソーム画分を用いたカルボラン誘導体のin vitro代謝安定性評価を実施した。ヒトおよびラットの肝ミクロソームを用い、既存のカルボラン誘導体ならびにカルボラン誘導体と類似構造をもつカルボラン非含有医薬活性化合物の代謝安定性をLC/MS/MS分析によって評価した。ヒト肝ミクロソームを用いた代謝安定性評価ではカルボラン誘導体の方が若干高い安定性を示した。ラット肝ミクロソームを用いた評価では、いずれの化合物も複数の代謝物に代謝され安定性の違いは認められなかった。今後主代謝物を同定し代謝経路を解明する予定であるが、カルボラン誘導体は一定の代謝安定性を有していることが示唆された。 また前年度本課題においてカルボラン誘導体が薬剤排泄ポンプ(P-糖タンパク質:P-gp)の基質として認識されないことを明らかとした。P-gpは臨床上重要な薬物相互作用や癌の多剤耐性とも関連する。P-gp発現細胞とP-gp輸送基質を用いてカルボラン誘導体のP-gp阻害活性を評価したところ、比較したカルボラン非含有化合物よりも高いP-gp阻害作用を示すことが明らかとなった。今後は耐性癌細胞を使用してカルボラン誘導体の活性について精査する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナウィルス感染症の影響で研究が中断したこともあり、研究に使えるまとまった時間が予定より短縮され、研究全体に遅れを生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
カルボラン誘導体の活性メカニズム解析を集中的に行う予定である。継続的に研究を進められるエストロゲン受容体ならびにアンドロゲン受容体を標的とした新規カルボラン誘導体の合成も併せて実施する。
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Causes of Carryover |
活性メカニズム解析が計画通り実施できず研究の一部を次年度に延期したため、その実験用試薬などの購入を延期したため。 参加を予定していた学会が延期、またはオンライン開催となったことも含め、研究計画が大幅に変更になった。
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