2020 Fiscal Year Research-status Report
混合原子価状態を活用した長寿命ラジカル分子のデザイン・合成・光触媒への応用
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20K15964
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Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
谷岡 卓 愛知学院大学, 薬学部, 助教 (40846359)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 光レドックス触媒 / 混合原子価 / キサンテン系色素 / 近赤外光 / エオシンY |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は、架橋キサンテン系色素をプラットフォーム分子とし、混合原子価状態を形成可能な新規可視光レドックス触媒の創出に取り組んだ。以下に得られた結果について示す。 まず、市販の可視光レドックス触媒であるエオシンYを濃硫酸中で反応させることで、架橋エオシンY(BEY)を合成した。BEYの分子構造はNMRやX線結晶構造解析、MSなどを利用して明らかにした。BEYの吸収スペクトルを測定した結果、DMSO中で700nmに吸収極大を示し、エオシンYに比べて大きく長波長化していることがわかった。またBEYは市販の近赤外酸性色素と比較しても同程度かそれ以上の安定性を示し、可視光レドックス触媒としてポテンシャルを有していることがわかった。 続いて、BEYを光触媒とし、芳香族ジアゾニウム塩の光アリール化反応に適応した。種々のジアゾニウム塩とフランなどのヘテロアリールとのカップリング反応において、BEYはエオシンYと同程度の触媒活性を示した。特筆すべき点として、BEYに830nmの光を照射しても光アリール化反応が高効率で進行することがわかった。これは、550nm程度の光までしか光レドックス反応に利用できないエオシンYと比較して、より幅広い波長の光が利用できるという点において優れていると考えられる。また、BEYを光触媒とした芳香族ジアゾニウム塩の光アリール化反応には、近赤外LED光源を利用することで、多環式炭化水素(PAH)や可視域の蛍光色素も利用できることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
昨年度は計画していた架橋キサンテン系色素の創出と、光レドックス反応触媒としての応用が達成できたことに加え、創出した触媒が830nmまでの近赤外光を光レドックスに利用できることを新たに見出した。また架橋キサンテン系色素の誘導化について、当初計画していなかったカップリング反応を利用した誘導体化も可能なことがわかりつつあり、上記の2点から当初の計画以上の成果が得られていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は①可視光領域に吸収を有する蛍光色素への光アリール化反応の検討、および②架橋キサンテン系色素の誘導体化を実施する予定である。具体的な方策は以下の通りである。 ① について、昨年度の研究から、架橋キサンテン系色素を光触媒として用いることで可視光領域に吸収を有する分子への直接アリール化が可能であることがわかった。そこで本年度は、蛍光色素への直接光アリール化反応に取り組み、本触媒を利用して新たな機能を有する蛍光色素を創出する研究を行いたいと考えている。 ②について、架橋キサンテン系色素をより多種多様な光レドックス反応に展開するために、架橋キサンテン系色素の誘導体化をおこなう。昨年度の研究から、架橋フルオレセイン型の分子の水酸基をトリフラート化し、パラジウムを用いたカップリング反応により、架橋ロドール型の分子や架橋ローダミン型の分子を合成できることがわかってきた。そこで本年度は、キサンテン系色素の濃硫酸中での直接環化反応に加え、カップリング反応を利用した誘導体化を行うことで、多様な架橋キサンテン系色素の創出を試みる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により、学術集会の中止(オンライン化)や学外での研究打ち合わせの中止、研究室への出勤停止などの不測の事態が起こったため次年度使用額が生じた。 職場のコロナ対策により、R3年度は通常通り研究を進めることが可能であると思われるため、次年度使用額はR2年度の使用目的に従ってR3年度に利用する。
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