2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K15971
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
福田 庸太 大阪大学, 薬学研究科, 助教 (20783179)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | X線結晶構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
乾燥耐性を持つ抗酸化活性関連タンパク質候補について構造機能相関解析を目指した。まず、乾燥時に発現量が上昇することが知られているクマムシ由来タンパク質RvLipoについて、X線結晶構造解析をおこなった。申請時点では構造決定に至っていなかった、リガンドの結合していないApo状態について、結晶化条件に含まれる亜鉛イオンからの異常分散効果を用いて位相決定をおこなうことに成功し、構造精密化まで完了した。また、リガンドの一つであり抗酸化物質であるビリベルジンが結合した状態のサンプルを調製する方法を確立し、分光学的測定をおこなうとともに、結晶化をおこない、得られた結晶を用いて構造解析をおこなった。得られた結晶はビリルビン由来の青緑色を呈しており、精密化後の構造ではバレル構造上部のループ領域がApo型から構造変化していたが、ビリベルジンの電子密度は観測されなかった。X線照射の際に、結晶の色が黄色へと変色することが判明しており、強力なX線の照射によるビリベルジンの還元反応が結晶中で進行したと推測された。そこで、RvLipoと似た立体構造をとる他のビリベルジン結合タンパク質との構造比較から、ビリベルジンのおおよその結合位置を推測するとともに、結晶中での還元反応が進行しにくいと期待できる変異体の作製をおこない、これら変異体を用いて結晶化を進めている。また、申請時には予定していなかったが、原核生物において活性酸素の除去に関与しているタンパク質に構造が類似したクマムシタンパク質についても、X線結晶構造解析をおこなった。本タンパク質の遺伝子は乾燥耐性を持つクマムシに複数見られ、本研究ではそのうち2種について構造決定をおこなうとともに、分光学的測定を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
RvLipoについて、X線結晶構造解析に成功したほか、電子密度は見えていないものの、ビリベルジン結合型についても結晶構造解析をおこなうことができた。また、当初は予定していなかったものの、活性酸素除去酵素に類似した構造をもつ2種のクマムシタンパク質の構造解析にも成功した。 以上のことから、当初の予定通り、抗酸化耐性に関わるクマムシタンパク質に関する新たな知見を得られてものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、RvLipoについて、構造機能相関研究をおこなう。とくに変異体の構造機能相関、リガンドとの結合力の変化について推進していきたい。 活性酸素除去酵素に類似した構造をもつ2種のクマムシタンパク質の構造解析も同様に進める。とくに、活性酸素除去能について活性測定系を構築し、研究を推進したい。また、クマムシ以外の生物からの類似タンパク質についても精製が完了しており、これらとの機能的比較もおこないたいと考えている。 本年度はあまり進捗が見られなかったペルオキシレドキシンに関する研究も当初の予定通り進めていきたいと考えている。
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