2021 Fiscal Year Annual Research Report
慢性疾患の早期病態解明を指向したキラルバイオマーカーイメージング法の開発
Project/Area Number |
20K15972
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
杉山 栄二 静岡県立大学, 薬学部, 助教 (90806332)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | キラル / 質量分析 / イメージング / イオンモビリティースペクトロメトリー / 誘導体化 / ジアステレオマー |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、がんや慢性腎臓病等のバイオマーカーとして生体内でマイナーな立体構造を有する光学異性体が重要視されている。しかし、生体組織に含まれるキラル分子の各エナンチオマーをそれぞれイメージングすることは、通常極めて困難である。そこで本研究では、ジアステレオマー誘導体化とイオンモビリティースペクトロメトリーを質量分析イメージングに組み合わせることで、生体組織中のキラル分子を選択的にイメージングする新手法の開発に取り組んだ。 最終年度はまず、未検討であったアミノ酸をキラルな誘導体化試薬と反応させ、得られる各ジアステレオマー誘導体がどの程度分離するかを調べた。その結果、標的分子の構造に応じて分離に最適な誘導体構造が異なることを明らかとした。次に、比較的幅広い分子の分離に有効であったピロリジン骨格に着目し、既存の試薬構造を改変した新規誘導体化試薬を合成した。これら試薬とDL-2-ヒドロキシグルタル酸の反応により得られる誘導体を測定したところ、新規試薬で得られる誘導体のシグナル強度は従来試薬で得られるものより10倍以上高かった。また、新規試薬で得られた誘導体をイオンモビリティースペクトロメトリーにより分離したところ、各誘導体に由来するピークは完全分離した。さらに、マウス精巣の新鮮凍結切片に新規試薬とイオン化補助剤を塗布してイメージングを行った結果、組織に含まれる内因性2-ヒドロキシグルタル酸のD体とL体が期待通り検出され、それらの異なる分布が可視化された。 本報告時点において質量分析イメージングによるエナンチオ選択的イメージングの実現を報告した例は他に見当たらない。本研究の成果は、種々の疾患に関連する光学異性体を対象とした、新しい体内動態解析法の開発に資すると考えられる。
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Research Products
(14 results)