2020 Fiscal Year Research-status Report
外部刺激応答性非ラメラ液晶形成脂質含有リポソームによるsiRNAの体内動態制御
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20K15973
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Research Institution | Josai University |
Principal Investigator |
板倉 祥子 城西大学, 薬学部, 助教 (20787387)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 非ラメラ液晶形成脂質 / ナノDDS / 刺激応答性 / がん治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
siRNAに代表される核酸医薬は、創薬困難な標的も遺伝子レベルで制御可能であることから、がんなどの幅広い疾患に対して有効性が期待できる。生体内への応用には血中での安定性を確保し、標的組織の細胞内まで効率よく送達可能なシステムが必要とされる。がん治療においては、リン脂質をベースとするナノ粒子がsiRNAの全身投与型キャリアーとして汎用されているが、血中での滞留性とがん細胞との相互作用の両機能ともに優れた薬物送達システム(DDS)の設計について未だ十分な解決戦略がない。そこで、細胞と高い相互作用を示す非ラメラ液晶形成脂質に着目し、ラメラ構造の脂質からなるリポソームに組み込むことで全身投与を可能とし、温度応答性機能を組みわせた外部刺激に応答する薬物治療システムの構築を目的とした。 2020年度は、非ラメラ液晶形成脂質とラメラ液晶形成脂質を組み合わせたナノ粒子を調製し、温度変化に応答した物性および生体膜との相互作用について検討した。調製したナノ粒子の膜特性として、温度変化による膜流動性をTEMPO消光法により評価した結果、非ラメラ液晶形成脂質の含有量に応じて膜流動性が増大した。クライオTEM観察により、調製した粒子はシングルラメラのリポソーム様の形態であることが確認された。また、モデル生体膜として赤血球膜に対する溶血活性を指標に評価した結果、非ラメラ液晶形成脂質を含有したナノ粒子で、37℃に比べて45℃付近で溶血活性が増大した。これらの結果から、非ラメラ液晶形成脂質をラメラ液晶形成脂質に組み込むことで、ラメラ構造の粒子が作製でき、温度変化に応答した膜流動性の増大とそれに伴う生体膜との相互作用の増大が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は非ラメラ液晶形成脂質のナノ粒子への含有量を検討し、温度変化に応答した膜流動性の変化と生体膜との相互作用が認められ、外部刺激(温度)に応答するナノ粒子が構築できた。また、今後の機能性の検討にあたり、薬物の封入方法および担癌マウスへの静脈内投与による腫瘍への集積、温度刺激として980nmのレーザーでのin vitro試験の予備検討を終えているため、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
構築したナノ粒子の機能性を培養細胞および担癌マウスにより検討する。まず、レポーター遺伝子としてルシフェラーゼを発現する肺がん細胞株4T1/Luc細胞を用い、siRNA-Lucをナノ粒子に封入することで、遺伝子発現抑制効果をin vitro、in vivoで評価する。温度変化は外部刺激として980 nmの近赤外光により制御し、照射の有無による薬効の変化を評価する。
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