2020 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of the mechanisms of bortezomib resistance in multiple myeloma and strategies to overcome them
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20K15978
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Research Institution | Doshisha Women's College of Liberal Arts |
Principal Investigator |
高橋 知里 同志社女子大学, 薬学部, 特任助手 (70833680)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | プロテオミクス / メタボロミクス / 多発性骨髄腫 / ボルテゾミブ / 耐性 |
Outline of Annual Research Achievements |
多発性骨髄腫は、骨髄中の形質細胞が悪性化した難治性の造血器腫瘍である。プロテアソーム阻害薬は、多発性骨髄腫の治療の主要なkey drugであり、その1つであるボルテゾミブは初発・再発例を含めて幅広く使用されている。しかし、その耐性・不応例が臨床の現場では顕在化してきている。 本年度は、ボルテゾミブ耐性機構を解明するためのメタボローム解析のために、これまでに測定系を確立した酸化脂肪酸に加え、超臨界流体クロマトグラフィー/質量分析計 (SFC/MS) を用いたリン脂質(グリセロリン脂質、スフィンゴ脂質等)測定系を構築した。SFCは、従来の方法である順相クロマトグラフィー(NPLC)や親水性相互作用型クロマトグラフィー(HILIC)よりも、解析時間の短さや幅広い種類の脂質に対する分離という点で優れている。標準品を用いて、SFC/MS測定パラメーターの最適化を行い、保持時間の前後 2 分に測定時間を絞ったscheduled Selected Reaction Monitoring (sSRM) メソッドを作成した。最終的に193種類の脂質分子種についてパラメーターを決定した。また、検量線を作成したところ良好な直線性を示し、本測定系の定量性についても確認した。 本年度に確立したリン脂質測定系を用いて、ボルテゾミブ&デキサメタゾン療法(BD療法)治療前の多発性骨髄腫患者の血清中の脂質分子種を測定した。得られた結果から、ボルテゾミブ耐性細胞株を用いた耐性化機構の解明において、着目すべき分子やシグナル伝達経路を同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は、SFC/MSを用いたリン脂質測定系の構築を行った。ボルテゾミブ耐性骨髄腫細胞株の解析において着目すべき分子やシグナル伝達経路の同定は終了したが、ボルテゾミブ耐性細胞株の測定、解析は、まだ完了していない。そのため、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果を継続発展させ、引き続きボルテゾミブの感受性に係るシグナル変動を患者血清、およびボルテゾミブ耐性細胞株の網羅的な探索より同定することを目標とする。多発性骨髄腫患者のボルテゾミブ治療前の血清中脂質と治療効果との比較から、ボルテゾミブ不応性を示した患者の血清中で不飽和脂肪酸含有ホスファチジルコリン(usPC)とエーテル型ホスファチジルエタノールアミン(Ether PE)が有意に減少していることを見出したが、それらの血中脂質が薬剤耐性機構をどのように決定しているかを明らかにするためにボルテゾミブ耐性細胞株を用いたボルテゾミブ感受性や耐性に関わるメタボロームおよびプロテオーム発現の変動を明らかにする。これらの結果を多発性骨髄腫患者血清の解析結果と照合し、ボルテゾミブ耐性化に伴う細胞内のシグナル変動の解析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
理由:研究を進めていく上で、SFC/MSを用いたリン脂質測定系の構築、患者血清試料の測定を優先したため、当初の計画の細胞培養に必要な見込み額と執行額は異なったが、今後の研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。 使用計画:細胞培養に必要なCO2インキュベーターおよび必要な試薬群を購入する。さらには、メタボローム測定用標準品として必要な試薬群も購入予定である。
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