2021 Fiscal Year Research-status Report
パースルフィドによるタンパク質酸化損傷修復メカニズムの解明
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20K15983
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高田 剛 東北大学, 医学系研究科, 助教 (20733257)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | パースルフィド / 超硫黄分子 / 酸化修飾 / レドックスシグナル / 酸化ストレス / チオレドキシン / リン酸化修飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体内で働く酵素やタンパク質の酸化還元状態は、その高次構造や生理機能の発現動態に大きな影響を及ぼす。タンパク質中のシステインは、活性酸素などにより、スルフィン酸(P-SO2H)やスルホン酸(P-SO3H)へと過剰に酸化されると不可逆的に著しい機能障害がもたらされる。これに対して、タンパク質に含まれるシステインパースルフィド(P-SSH)は、P-SHよりも酸化されやすい一方で、酸化されたパースルフィドは硫黄カテネーションにより複数のジスルフィド結合(-SS-)を持つため、還元的な解離が可能であり、可逆的に修復することができる。本研究では、これまで全く知られていなかった「パースルフィドによるタンパク質酸化損傷修復メカニズム」の解明を目的とした。 チロシン脱リン酸化酵素(PTP1B)は活性酸素により不可逆的な酸化修飾と酵素活性阻害を受けるが、パースルフィド化を介して可逆的に修復されることを証明した。このパースルフィド化は、チオレドキシン系(Trx1, TRP14, TRP32)により酵素的に還元されることを明らかにした。また、記憶・学習をはじめとする高次脳機能に重要なカルシウム/カルモジュリン依存性タンパク質キナーゼ(CaMK)群においては、パースルフィド化により活性阻害が起こる一方で、親電子物質などによる不可逆的な修飾に対しては、可逆性が付与されることを明らかにした。さらに、生体内の酸化還元状態の制御に重要な分子であるNADPHオキシダーゼ(Nox)と一酸化窒素合成酵素(NOS)が、グルタチオンポリスルフィドなどの超硫黄分子の酸化還元・再活性化に関わることを発見した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルス感染症の拡大により一部解析が滞ったが、おおむね目標とする研究成果を得ることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
目的とした研究成果が得られており、現段階において研究を遂行する上での問題はなく、研究計画の変更の必要はないと考えている。当初の目的であるパースルフィドによるタンパク質酸化損傷修復メカニズムに加えて、我々が新たに見出した新規硫黄代謝経路がタンパク質酸化損傷修復に及ぼす影響についても検討し、超硫黄分子を介したタンパク質酸化損傷修復の全容解明に向けて、引き続き当初研究計画に基づいて研究を推進する。
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Causes of Carryover |
当該年度に、硫黄代謝物の分析を行い、その結果を基に国内外の学会において発表する予定であったが、新型コロナウイルスの流行により延期およびオンラインでの開催となったため旅費による出費が抑えられ、未使用額が生じた。本研究の目的であるパースルフィドによるタンパク質酸化損傷修復機構とその生理機能の解明に向けて、さらに詳細な分子メカニズムの解析のために使用する。
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Research Products
(15 results)