2020 Fiscal Year Research-status Report
多剤排出ポンプの隠された役割:その未知の基質の同定による役割の解明
Project/Area Number |
20K15994
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
森田 大地 広島大学, 医系科学研究科(薬), 助教 (80826371)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 多剤排出ポンプ / 反転膜小胞 / 薬剤排出 |
Outline of Annual Research Achievements |
黄色ブドウ球菌の主要な多剤排出ポンプNorAの基質輸送を利用した基質の分離・濃縮を目指し、NorAを大腸菌に発現させ、反転膜小胞を調製した。このNorA反転膜を用いて、既知の基質の輸送についてH+移動を感知する蛍光色素を利用して確認できた。また基質輸送を行った後の反転膜を分離するための手法として、超遠心、濾過、限外濾過を検討した。超遠心と濾過では分離後の反転膜は活性を維持していたが、限外濾過では活性の低下が見られ、超遠心では反転膜の回収率が良くなかったため、濾過による反転膜の回収が適切と考えられた。 NorAの既知の基質の中で、最も輸送されるethidiumを用いて反転膜小胞への濃縮の検討を行なった。コントロールの反転膜小胞と比較し、NorA発現反転膜小胞ではethidiumの回収量が多かった。一方で基質輸送活性測定ではethidiumの輸送が確認されなかったコントロールにおいてもethidiumが回収された。これは、ethidiumの回収量は、NorAの輸送に加え脂溶性の高いethidiumが脂質膜へ分配した量を含んでいることが示唆された。 また、黄色ブドウ球菌の培養上清について、反転膜小胞での輸送活性が確認された。しかし、NorAを欠損した黄色ブドウ球菌の培養上清でも輸送活性が見られたため、NorA以外の大腸菌の輸送タンパクによる輸送も行われていることが示唆された。これは反転膜小胞を利用した培養上清からの基質分離の実現性に関しては有望な結果であったが、培養上清に関しては液液分配などによる精製を検討する必要性が予想された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
反転膜小胞の調製や分離手法に関しては順調に進んでいる。しかしながら、反転膜小胞の使用量などに関する条件の検討を、既知の基質で行ったが、条件検討に利用したethidiumの脂溶性の影響か、バックグラウンドが大きいため、条件検討を行う基質の再検討が必要と考えられる。 また黄色ブドウ球菌の培養上清に関する輸送活性についても、大腸菌の輸送タンパクの影響によるバックグラウンドが示唆されており、効率的な解析には培養上清の液液分配等を利用した精製を検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
反転膜小胞の使用量などに関する条件の検討には、NorAの既知の基質の中でも比較的水溶性が高く、輸送されやすいnorfloxacinなどを用いて検討を行う。また、より高感度に解析を行うため、HPLC法による検出を検討する。 基質精製のための液液分配の条件などを検討するとともに、黄色ブドウ球菌NorA発現株・破壊株の培養上清中をHPLC法によって分析し両者での差異成分の解析を行い、NorAの本来の基質成分の探索を行う。これによって得られた基質成分候補に関して反転膜小胞での輸送活性を行い、基質の確認を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナの流行に関連し、学会の中止やウェブ開催となり旅費が執行されなかった。また、予定にあった外注による分析依頼費について、当該年度は実施せず次年度に持ち越されたため、次年度使用額が発生した。
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