2020 Fiscal Year Research-status Report
リアルワールドデータの応用による新規化学療法誘発末梢神経障害予防法の確立
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20K16007
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
相澤 風花 徳島大学, 病院, 特任助教 (80848367)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 末梢神経障害 / 化学療法 / 医療ビッグデータ / HMG~CoA還元酵素阻害剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、白金系抗がん剤オキサリプラチンによる末梢神経障害の発現を抑制する薬剤の探索とその有効性を明らかにすることを目的に検討を行った。米国食品医薬品局(FDA) の有害事象自発報告データベース(FAERS)を用いた検討より、脂質異常症治療薬 HMG-CoA還元酵素阻害剤(スタチン系薬剤)併用がオキサリプラチン誘発末梢神経障害を抑制することを明らかにした。In vivo における薬効評価を行うためにC57BL/6J雄性マウスにオキサリプラチン(6mg/kg, 週1回, 3週)を投与し、末梢神経障害モデルを作製した。アセトンテストにおいて、オキサリプラチン投与急性期に生じる寒冷痛覚過敏はスタチン系薬剤(シンバスタチン, アトルバスタチン, ロスバスタチン, 10mg/kg, 1日1回)の2日間反復経口投与によって抑制されなかった。一方で、オキサリプラチンの累積投与量に依存し発現する機械的痛覚過敏は、スタチン系薬剤(1, 10mg/kg, 1日1回)の21日間反復経口投与によって用量依存的かつ有意に抑制された。以上より、スタチン系薬剤がオキサリプラチン誘発慢性末梢神経障害の新規治療薬となる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、医療ビッグデータを用いた候補薬剤の抽出ならびに行動薬理学的手法を用いてモデル動物による薬効解析を行い、新規オキサリプラチン誘発末梢神経障害治療法の可能性としてスタチン系薬剤による薬物療法の可能性を見出した。現在、得られた組織サンプル及びマウス初代培養後根神経節細胞を用いて、スタチン系薬剤による末梢神経障害抑制作用メカニズムの解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
[1]オキサリプラチン誘発末梢神経障害モデルマウスの脊髄後根神経節(DRG)を摘出し、遺伝子発現データベース解析によって抽出されたスタチン系薬剤の標的となる遺伝子発現及び細胞内シグナル伝達経路を特定するとともに、スタチン系薬剤の主要な薬効発現メカニズムであるHMG-CoA還元酵素阻害作用との相違点解明に取り組む。 [2] C57BL/6Jマウス脊髄からDRGを単離し、初代培養DRG神経細胞を作成する。オキサリプラチン誘発神経細胞死に対するスタチン系薬剤の神経保護作用は、細胞生存率、神経突起伸長をWST-8法や蛍光免役染色法を用いた検討で明らかにする。加えて、リアルタイムPCR法等の生化学的手法を用いて遺伝子およびタンパク質の発現変動を解析し、細胞レベルでスタチン系薬剤による神経保護機序の解明を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大のため、研究施設への立入制限が行われ研究活動の一時中断を余儀なくされた。また、主要な国内外の学会が中止・延期されたほか、WEB会議ツール等を使用したオンライン開催となり、当初計画していた旅費等の配分金の使用が少なかったため、次年度使用額が生じた。令和3年度は、次年度使用額を含めて、オキサリプラチン誘発末梢神経障害モデルマウスおよび初代培養DRG神経細胞作成のためのマウス購入、飼育費に使用する。また、作成したモデル動物より摘出した組織、神経細胞を用いて、治療候補薬剤による遺伝学的な変化を検討するために、リアルタイムPCRおよびウエスタンブロット法を用いてmRNAならびにタンパク質発現を検討するための関連試薬を購入する。
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Research Products
(3 results)