2022 Fiscal Year Annual Research Report
初代培養肝実質細胞の増殖に対するS-アリル-L-システインの効果に関する研究
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20K16011
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Research Institution | Josai University |
Principal Investigator |
茂木 肇 城西大学, 薬学部, 助教 (00582272)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | S-アリル-L-システイン / cyclin B1 / α1アドレナリン作動性 / ERK2 / Ras |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、S-アリル-L-システイン(SAC)の肝実質細胞増殖促進作用に対するmRNA発現について検討を行った。肝実質細胞のc-mycおよびc-fosのmRNA発現量は、SAC刺激後1時間において一過性の上昇ピークを示した。、更にSAC刺激後3時間には、cyclin B1の有意な発現量の上昇が認められた。これら遺伝子は細胞周期の時期により発現することが知られており、c-mycやc-fosは、G0からG1期にかけて、また、cyclin B1は、G2/M期に発現量が増加すると言われている。つまり、SACは、これらの遺伝子を発現させることにより肝実質細胞の細胞周期を移行し、早期の細胞増殖促進作用を実現したと考えられる。 また、本年度は、SAC誘発肝実質細胞増殖促進作用に対するα1アドレナリン作動性増強効果についても検討を行った。、SACとα1作動薬であるフェニレフリン(Phe)との併用では、SAC単独群と比較して有意な肝実質細胞数および核数の増加を認められた。さらに、SACにより誘発されたERK2リン酸化活性も、Phe併用により増強効果を認めた。このPheによるERK2リン酸化活性増強効果は、PKC阻害薬(GF109203X)によりSAC単独レベルまで抑制された。また、PKC活性化剤(TPA)においてもPheと同様な増強効果が観察された。一方、ERK2の上流に存在するRasの活性を測定したところ、SACによるRas活性化は認められたが、PheおよびTPA併用におけるRas活性増強効果は認められなかった。以上の結果より、初代培養肝実質細胞においてSACによる細胞増殖促進作用およびERK2リン酸化促進作用は、α1アドレナリン作動性の増強を受け、その増強効果は、活性化されたPKCがSACの増殖シグナルのERK2よりも上流、Rasよりも下流の間で相互作用していることが考えられた。
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