2021 Fiscal Year Research-status Report
酸化ストレスが心筋拡張機能障害に関与する機序の解明
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20K16013
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
浜口 正悟 東邦大学, 薬学部, 講師 (80747767)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 酸化ストレス / 拡張機能障害 / SERCA |
Outline of Annual Research Achievements |
従来、心不全は心臓の収縮機能の低下が病態の主体であると考えられてきた。しかし、心収縮力機能低下を伴わない拡張機能障害に基づく心不全が報告され、近年このタイプの心不全の患者数が増加している。現在、拡張機能の改善に焦点を当てた治療薬は存在せず、心筋の拡張メカニズムの詳細な解明と拡張機能をターゲットとした治療戦略の確立が望まれている。本研究ではこの拡張機能障害と活性酸素種(ROS)による酸化ストレスとの関連に注目し、糖尿病などの病態時に生じる拡張機能障害の発生機序の解明と新たな治療戦略開発につなげることを目的とする。今年度は、昨年度マウス摘出心室筋組織標本の弛緩時間を短縮させることが明らかとなったquercetinについて、その作用機序を明らかにする目的で細胞内カルシウム動態に対する作用の評価を行った。 マウス心室筋細胞において、蛍光色素を用いて細胞内カルシウム動態を可視化し、quercetinの作用評価を行った結果、quercetinは心筋の拡張機能と関連する細胞内カルシウム濃度の減衰時間を短縮させることが明らかとなった。また、膵臓のβ細胞を障害するstreptozotocinを用いて作成した糖尿病モデルマウスを用いて、今年度は細胞レベルでの検討を行った。糖尿病マウスの心室筋細胞では正常マウスに比べて細胞内カルシウム濃度の減衰時間が延長しており、細胞内のカルシウム制御の破綻が拡張機能障害に繋がっていることが示唆された。このマウス心室筋細胞にquercetinを処置すると糖尿病マウス、正常マウスどちらもカルシウム減衰時間が短縮された。以上の結果からquercetinには細胞内カルシウム動態のうち、特に細胞内カルシウム濃度の減衰を促進させる作用があり、これは昨年度明らかとなったquercetinの弛緩時間短縮作用の要因の一つであることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、酸化ストレスと拡張機能障害の関連をより詳細に調査するため、蛍光色素を用いた細胞内カルシウム動態の評価を行った。その結果、quercetinによる作用や糖尿病モデルでの変化が検出可能であり、今後の研究ツールとしての活用が期待される。一方で、in vitroでの酸化ストレスを負荷する実験系の構築には遅れが生じている。過酸化水素(H2O2)や、金属イオンとH2O2とのフェントン反応によるヒドロキシラジカル(・OH)生成による酸化ストレス負荷を試みたが、弛緩時間に対する安定した作用が得られず、評価系として用いるには至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
酸化ストレス負荷を定量的に評価するため、細胞膜を透過し細胞内のROSを認識する蛍光色素用いたイメージング法による測定系の構築を目指す。また、新たな拡張機能障害モデルの構築を目指し、ドキソルビシンを用いた検討も進行中である。今年度は蛍光イメージングによるカルシウム動態測定系が確立されたので、酸化ストレスの測定系とカルシウム動態測定系を組み合わせて、ellagic acid、gingerol、quercetinが弛緩時間を短縮させた作用機序を細胞レベルで明らかにする。特に、心筋の弛緩機能に重要な役割を果たす筋小胞体カルシウムポンプ(SERCA)に対する酸化ストレス負荷や抗酸化物質の影響を検討する。
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Research Products
(11 results)