2020 Fiscal Year Research-status Report
アストロサイトの機能分子を標的とした頭部外傷に対する新規治療薬の確立
Project/Area Number |
20K16016
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Research Institution | Osaka Ohtani University |
Principal Investigator |
道永 昌太郎 大阪大谷大学, 薬学部, 助教 (60624054)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 頭部外傷 / アストロサイト / 血液脳関門 / 脳浮腫 |
Outline of Annual Research Achievements |
頭部外傷によるBlood-brain barrier (BBB)の破綻や脳浮腫は致命的な病態であるにも関わらず、有効な治療薬は確立されていない。我々はこれまでに頭部外傷モデルマウスを作製し、頭部外傷後に増加するエンドセリンがBBBの破綻や脳浮腫の発生に関わることを見出した。当該年度の研究では、臨床において肺動脈性肺高血圧症の治療薬として使用されているエンドセリン受容体拮抗薬であるボセンタンのBBB破綻と脳浮腫に対する作用を確認した。 頭部外傷モデルマウスの脳組織ではBBBの破綻と脳浮腫が認められたが、ボセンタンを尾静脈投与したマウスではこれらは抑制されていた。また、頭部外傷後のマウス脳組織ではエンドセリンやエンドセリンETB受容体の発現量が増加していたが、ボセンタンの投与によってこれらの増加も抑制された。さらに、頭部外傷後に増加する血管透過性亢進因子であるMatrix metallopeptidase 9 (MMP-9)やvascular endothelial growth factor-A (VEGF-A)がBBBの破綻を促進させることが知られているが、ボセンタンの投与によって頭部外傷後のMMP-9とVEGF-Aの発現増加は抑制された。ボセンタンの副作用として血圧に対する影響が考えられたが、本研究で投与したボセンタンの投与量では、マウスの血圧にほとんど影響を与えなかった。 これらの結果より、ボセンタンはエンドセリン受容体シグナルの抑制、血管透過性亢進因子の発現抑制によってBBBの破綻や脳浮腫を抑制できることが示唆され、頭部外傷に対する新たな治療薬の候補となりうることが期待される。 今後は頭部外傷のBBB破綻や脳浮腫に関わる脳グリア細胞の一種であるアストロサイトの培養細胞を用いて、エンドセリン受容体拮抗薬の治療効果における詳細なメカニズムを解明していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
頭部外傷モデルマウスにおけるBBBの破綻や脳浮腫の時間経過、ボセンタンの有効な投与量の設定などがすでにできていたので、計画通りに研究を遂行していくことができた。また、マウスの血圧測定も本学研究施設に非観血式血圧測定装置が設置されていたので問題なく行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
頭部外傷後の脳内ではBBBの破綻を促す血管透過性亢進因子だけではなく、BBBの破綻を回復させる血管修復因子の発現も変動することが示唆されている。血管修復因子の一種であるソニックヘッジホッグはアストロサイトで発現していることが報告されているので、頭部外傷モデルマウスの脳組織および傷害を与えたアストロサイト培養細胞におけるソニックヘッジホッグの発現変化を遺伝子およびタンパク質レベルで確認し、ソニックヘッジホッグのBBB破綻や脳浮腫に対する作用を確認していく。さらに、エンドセリン受容体拮抗薬による頭部外傷のソニックヘッジホッグ発現への影響も確認していく予定である。
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Causes of Carryover |
当初の研究計画で想定していたよりも実験マウスの数を減らすことができ、消耗品もまとめて購入したことで通常価格よりも安価で購入することができた。また、参加した学会がオンライン開催となったため、学会出張で使用する予定だった旅費を使用しなかった。
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[Journal Article] Angiopoietin-1/Tie-2 signal after focal traumatic brain injury is potentiated by BQ788, an ETB receptor antagonist, in the mouse cerebrum: Involvement in recovery of blood-brain barrier function.2020
Author(s)
Michinaga Shotaro, Tanabe Ayami, Nakaya Ryusei, Fukutome Chihiro, Inoue Anna, Iwane Aya, Minato Yukiko, Tujiuchi Yu, Miyake Daisuke, Mizuguchi Hiroyuki, Koyama Yutaka.
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Journal Title
Journal of neurochemistry
Volume: 154
Pages: 330-348
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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