2020 Fiscal Year Research-status Report
Investigation of the mechanism worsening Alzheimer's disease by vascular endothelial dysfunction in cerebral amyloid angiopathy.
Project/Area Number |
20K16022
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Research Institution | Foundation for Biomedical Research and Innovation at Kobe |
Principal Investigator |
笹原 智也 公益財団法人神戸医療産業都市推進機構, その他部局等, 研究員(研究員・PDクラス) (30735345)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 血管内皮 / 血管機能障害 / アミロイドβ / アミロスフェロイド / β-セクレターゼ / δ-セクレターゼ / 脳血管アミロイド血症 / アルツハイマー病 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳血管アミロイド血症はアルツハイマー病(AD)を増悪することが知られているが、その詳細な作用機序は未だ解明されていない。本研究では、血管障害に伴って遊離したメディエーターが神経細胞のADマーカーを増悪するかを検証する。本年度の研究では、in vitro培養評価系を新規に構築し、それを用いて血管障害により変化するADマーカーを見いだした。以下に詳細を報告する。 本研究課題の解明には神経-血管の脳微小環境を模倣した評価系が必須である。本研究ではカルチャーインサートに血管内皮細胞と血管周皮細胞、カルチャーボトムに大脳皮質神経細胞をそれぞれ播種し、三種類の細胞を用いた共培養評価系を新規に構築した。 次に構築した共培養評価系を用いて内皮障害が神経細胞のADマーカーを増悪するかを検証した。アミロイドβオリゴマーはアルツハイマー病の原因と考えられており、その一つであるアミロスフェロイドは血管内皮の機能障害を誘導することが、申請者のこれまでの研究で明らかにされている(国際科学論文に投稿中)。アミロスフェロイドをカルチャーインサート上の血管内皮細胞に処置後、経時的に回収した神経細胞中の各種ADマーカーの変化をSDS-PAGE/Western blotting法にて測定した。その結果、アミロスフェロイド処置後48~72時間で「β-セクレターゼ発現量の増加」と「δ-セクレターゼ活性化」を見いだした。 見いだしたADマーカーの変化が内皮障害に起因するかを調べるために、周皮細胞を除いた共培養系を用いて検証するとβ-セクレターゼの変化のみが確認された。逆に内皮細胞を除いた共培養系ではδ-セクレターゼの活性化のみが確認された。想定外にも内皮細胞と周皮細胞が異なるメディエーターを介して神経細胞のADマーカーを増悪することを見いだした。 以上本年度の研究では、血管障害がより増悪するADマーカーを解明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた令和2年度の実験計画では、「1)新規共培養系の構築」、「2)増悪するアルツハイマー病(AD) マーカーの探索」、「3)血管から遊離するメディエーターの特定」を目的としていた。以下に達成の状況を報告する。 令和2年度の実験では、カルチャーインサートを用いることで血管内皮細胞と血管周皮細胞、大脳皮質初代培養の3種類の細胞を組み合わせたin vitro共培養の評価系を世界で初めて構築した(計画1達成、特許申請予定)。構築した共培養評価系を用いて、血管障害により増悪するADマーカーとしてβ-セクレターゼとδ-セクレターゼを見いだし、これらの変化が内皮細胞障害と周皮細胞障害のそれぞれに起因することを解明した(計画2達成)。血管内皮細胞と周皮細胞から遊離するメディエーターについては未だ特定できていないが、各種阻害薬を用いた実験である受容体拮抗薬の前処置によりADマーカーの変化が阻害されたことから、プレリミナリーではあるが可能性のあるメディエーター候補を見いだすことに成功した(計画3一部達成)。今後令和3年度の研究期間にて、計画目標を一部達成できなかったメディエーターの特定を進める。 以上の研究結果とその進捗状況から、令和2年度の研究はおおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度の研究では、本年度の研究に引き続き「血管メディエーターの特定」と「メディエーターが血管から遊離する作用機序の解明」、「メディエーターが神経細胞に作用した後、アルツハイマー病(AD)マーカーを増悪する作用機序の解明」、さらには「動物モデルにおける有効性の確認」を進める。詳細を以下に記載する。 令和2年度に達成できなかった「血管メディエーターの特定」として、見いだしたメディエータ候補を神経細胞に処置することでADマーカーを増悪するかを検証し、平行してLC-MSやELISAキットなどで遊離したメディーエターの検出を試みる。「メディエーターが血管から遊離する作用機序の解明」および「メディエーターが神経細胞に作用した後、ADマーカーを増悪する作用機序」の解明については、各種阻害薬を用いてそれぞれの細胞内分子機構の解明を進める。 脳アミロイド血管症はADの増悪因子である。従って、血管メディエーターの特定とそれに関連するメカニズムを解明することができれば、新規AD治療薬の提案にまで研究を発展させることが期待できる。そこで研究の最終目標として、本研究の解析にて得られたメディエーターの作用機序を抑制することにより、AD症状が抑制されるかをADモデル動物にて検証する。 以上の本研究を通して、血管機能障害がメディエーターを介してADを増悪する作用機序の解明とそれに基づく新規治療ターゲットの提案に繋げる。
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