2021 Fiscal Year Research-status Report
Launching platforms for getting new secondary metabolites and revealing mechanism of activating cryptic BGCs
Project/Area Number |
20K16023
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
吉村 彩 北海道大学, 薬学研究院, 助教 (60866416)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | メンブレンベシクル / 休眠生合成遺伝子 / トランスポゾン |
Outline of Annual Research Achievements |
微生物の遺伝子には二次代謝産物の生産を担う生合成遺伝子クラスターがコードされている。しかし約80%以上の生合成遺伝子クラスターは通常の研究室培養条件では発現しない休眠遺伝子に分類される。休眠遺伝子を覚醒できれば今まで以上に新規二次代謝産物を獲得できる。本研究ではトランスポゾン変異と微生物由来の細胞外膜小胞を利用して休眠遺伝子を活性化し、新規二次代謝産物の獲得を目指す。さらに得られる二次代謝産物を足がかりに休眠遺伝子活性化機構の解明を行う。トランスポゾンを用いる手法では生合成遺伝子クラスターを豊富に含む微生物のゲノムに無作為に遺伝子変異を導入したトランスポゾン変異株ライブラリーを作成する。全変異株の代謝物を解析し、変異株のみに見られる代謝物を単離・構造決定する。細胞外膜小胞を用いる手法では微生物ライブラリーに細胞外膜小胞を添加して培養し、培養液抽出物を得る。細胞外膜小胞の有無で生産量に変化のあった代謝物を探索し、単離・構造決定を行う。両手法とも二次代謝産物の取得後はその責任生合成遺伝子クラスターの特定と当該クラスターの制御因子の探索によって休眠遺伝子活性化機構を理解する。 研究室独自の微生物ライブラリーに収蔵されたいくつかの環境分離株に対してトランスポゾン変異株ライブラリーを作製しつつ、代謝物解析を行っている。同時に、無作為に選出した微生物種に細胞外膜小胞を添加し、有望な二次代謝産物を探索した。複数の微生物種から新規化合物を含む合計9つの二次代謝産物を単離・構造決定した。それら化合物のうち5化合物が抗トリパノソーマ活性を示すことを見出した。さらに、責任合成遺伝子クラスターの同定とそれら遺伝子の転写量測定の結果から細胞外膜小胞による休眠遺伝子活性化は生合成遺伝子クラスターの転写活性化を介することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画ではトランスポゾン変異・細胞外膜小胞を利用した休眠遺伝子活性化法による新規天然物の獲得と活性化機構の解明を予定していた。 トランスポゾン変異に関してはこれまでにランダム変異株作製の報告がない微生物種に対して本アプローチを試みている。 細胞外膜小胞に関しては2株の微生物種から合計9個の天然物を取得した。さらに、ゲノム解読手法とRNA定量法によって休眠遺伝子活性化機構の一端を明らかにした。 以上から、天然物の単離と活性化機能の解析の両方において本研究は概ね順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
トランスポゾン変異に関しては、昨年度に引き続きランダム変異株の作製と標的化合物の取得を進める。天然物取得後はトランスポゾン変異導入部位の特定を行い、当該遺伝子の機能を足掛かりに休眠遺伝子活性化機構の解明を目指す。 細胞外膜小胞に関しては、これまで取得した天然物の化学構造と生合成遺伝子クラスターを足掛かりに休眠遺伝子活性化機構をより詳しく理解する。例えば、細胞外膜小胞応答菌のランダム遺伝子変異株ライブラリーから取得した天然物の生産量が変化した株を選抜する。それら変異株のトランスポゾン導入遺伝子を特定し、生合成遺伝子クラスターとの関係を理解する。他にも、細胞外膜小胞に内包される二次代謝産物の構造決定から細胞外膜小胞に含まれる休眠遺伝子活性化因子を特定する。同時に細胞外膜小胞をより多くの微生物種に添加し、網羅的に代謝物解析を行うことで、さらなる天然物の獲得を目指す。
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