2020 Fiscal Year Research-status Report
沈香芳香成分フェニルクロモンの骨格形成酵素の精密機能解析と機能の拡張
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20K16025
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
児玉 猛 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 助教 (40710207)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 生合成 / ポリケタイド合成酵素 / X線結晶構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
沈香は,精神作用を示す生薬として中医薬や漢方医薬で用いられている。沈香の主な芳香成分は2-(2-フェニルエチル)クロモン類であることが報告されており,沈香が生産する芳香成分の生合成に関わる酵素遺伝子を明らかにすることで,芳香成分を高含量で生産する人工沈香の開発や芳香成分を合成生物学的に生産することが期待される。本年度は,北京中医薬大学の共同研究者らが牙香樹Aquilaria sinensisのカルスの遺伝子発現を精査することで見いだした新規Ⅲ型ポリケタイド合成酵素diarylpentanoid-producing polyketide synthase (PECPS)が2-(2-フェニルエチル)クロモン類の基本骨格の形成に関与するかを検証した。まず,PECPSはHis-tagとの融合蛋白質として大腸菌に発現させた。次にNi-キレートアフィニティーカラムを用いて精製したPECPSについて,ベンゾイルCoA,4-ヒドロキシフェニルプロピオニルCoAおよびマロニルCoAを基質として酵素反応を行うと分子量268を示す生成物が確認された。NMRによる解析の結果,C6-C5-C6骨格を持つジアリールヘプタノイドである5-(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルペンタン-1,3-ジオンであることが確認された。ジアリールヘプタノイドは沈香から単離されており,ジアリールヘプタノイドがフェニルクロモン類の重要な前駆体であると考えられる。さらにPECPSの触媒機構を詳細に解析するために,X線結晶構造の取得を試みた。PECPSをNi-キレートアフィニティーカラム,イオン交換カラム,ゲル濾過カラムを用いて高純度に精製して,結晶化を行った結果,分解能2.0 Åの結晶構造を取得した。現在,得られた結晶構造を基に変異酵素を作成し,機能解析および結晶構造の取得を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,PECPSの異種発現系の構築と精製酵素を用いた機能解析,X線結晶構造の取得を目標にしていた。PECPSの機能としてベンゾイルCoA,4-ヒドロキシフェニルプロピオニルCoAおよびマロニルCoAを基質としてC6-C5-C6骨格を持つジアリールヘプタノイドを生成することを明らかにし,PECPSのX線結晶構造の取得にも成功していることから,総合的に考えて,おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
PECPSの結晶構造の情報から,酵素の機能発現に関与するアミノ酸残基を推測し,変異酵素を作成して詳細な機能解析を行う。また,作成したPECPSの変異酵素についてX線結晶構造を取得して,野生型の結晶構造と比較することで,より詳細なPECPSの触媒機構を明らかにする。
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Research Products
(5 results)