2020 Fiscal Year Research-status Report
IDO-1を分子標的とした天然物由来の難治がん治療薬のシーズ探索とその併用効果
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20K16033
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
松尾 侑希子 東京薬科大学, 薬学部, 講師 (70434016)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | IDO-1 / トリテルペン配糖体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は天然物資源からIDO-1阻害活性成分を探索するとともに、構造活性相関を得て、難治がん治療薬のシーズを見出すことである。さらに、天然物由来の IDO-1 阻害物質と既存の抗がん剤との併用効果を評価し、臨床応用を志向した難治がん治療薬のシーズ探索を実施する。併用により抗腫瘍活性の増強が認められれば、抗がん剤の治療効果の向上、副作用の軽減、医療費の削減、など臨床応用への展開につながる。このように難治がんの克服を目的とし、天然物を対象とした系統的な IDO-1 阻害物質の探索研究はこれが初めての例である。本研究で新たに単離する化合物とともに、申請者の有する天然物ライブラリーから40 種以上の多様なアルカロイドのIDO-1 阻害活性もあわせて評価することで、研究期間内に課題を達成することが可能である。 申請者はがんと生活習慣病の標的分子を指標に天然物から創薬シーズの探索研究を行ってきた。これまでにPPAR-gamma や AMPK を標的とする新規抗腫瘍活性成分、アポトーシスの関連タンパクの発現、構成糖の種類や糖鎖のわずかな結合の違いが細胞毒性の発現や強度、細胞周期に影響を与えることなどを明らかにした。 これらの実績を踏まえて2020年度の計画は① 植物エキスのスクリーニング、② IDO-1 阻害活性を指標とした成分探索と単離化合物の構造決定、と設定した。①では今年度は活性を示す植物エキスは見いだせなかった。②ではトリテルペン配糖体に着目した成分探索を進め、新規化合物の構造を決定した。この成果は日本薬学会第140年会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
① 植物エキスのスクリーニング IDO-1阻害活性成分としてアルカロイドに加えて近年トリテルペン配糖体が報告されている。そこで天然物ライブラリーのうちトリテルペン配糖体を単離しているゴマノハグサ科ジギタリスDigitalis purpurea種子およびトベラ科トベラPittosporum tobira葉、アルカロイドを含むタデ科タデアイPersicaria tinctoriaおよび生薬ゴシュユの4種の植物検体のメタノール抽出エキスを調整し、IDO-1 阻害活性をInhibitor Screening Assay Kitを用いて評価した。ポジティブコントロールにはIDO-1阻害剤エパカドスタットを用いた。エパカドスタットは濃度依存的にIDO-1活性を阻害し、IC50値は約0.01microMを示した。測定の結果、いずれの植物エキスも0.01mg/mLにおいて50%阻害活性を示さなかった。 ② IDO-1 阻害活性を指標とした成分探索と単離化合物の構造決定 植物エキスに活性は認められなかったが、P. tobira葉のトリテルペン配糖体に着目した成分探索を行い、4種の新規化合物を含む計5種のオレアナン型トリテルペン配糖体を単離し構造を決定した。化学構造はMS、NMR、CD など各種スペクトルデータの解析により決定した。糖鎖は加水分解後の糖画分についてHPLC分析を行い、保持時間と旋光度検出器の正負のシグナルを標準品と比較することにより決定した。同様にD. purpurea種子の成分探索を行い、3種の新規化合物を含む5種のトリテルペン配糖体を単離した。新規化合物はX線結晶構造解析により絶対配置も含めて構造を決定した。 以上より,本研究課題は概ね順調に進行していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
4種の植物検体のメタノール抽出エキスでは活性が見出せなかったが、DiaionHP-20カラムを用いてメタノール抽出エキスをそれぞれ30%メタノール、50%メタノール、メタノール、エタノール、酢酸エチルと極性ごとに溶出し、糖成分や脂質を取り除いた粗画分を調整した後、再度活性を測定する。また新たな植物エキスのスクリーニングも行う。また活性を示す植物エキスは見いだせていないが、同時並行で実施している成分分離において、単離化合物の構造決定は順調に進んでいる。次年度もこのペースで進め、今後は新たに③から④の方策を掲げる。 ③ IDO-1 阻害活性の評価および構造活性相関の解明:単離した化合物、天然ライブラリーのアルカロイド、漢方薬エキスの3 種の天然資源のIDO-1 阻害活性を評価する。陽性対照のエパカドスタットと比較してIC50 値が10 分の一以下の場合、活性有りと判断する。阻害様式が可逆的または非可逆的阻害であるかも併せて評価する。天然物の活性評価の結果をまとめて、構造活性相関に関する知見を得る。 ④ 難治がん細胞に対する毒性および併用効果の評価:IDO-1 阻害活性を示した化合物および漢方薬については、ヒト肺がん(SBC-3、A549)、ヒト膵臓がん(MIA Paca-2)、ヒト肝がん(HepG2)、ヒト腎臓がん(Caki-1)、ヒト口腔扁平上皮がん(HSC-2)、ヒト舌扁平上皮がん(HSC-4)など難治がん細胞に対する毒性を評価する。さらにIDO-1 阻害活性を示した化合物および漢方薬エキスと既存の抗がん剤(エトポシド、シスプラチン、ドキソルビシンなど)との併用効果を評価し、難治がん治療薬のシーズを見出す。細胞毒性はMTT 法、トリパンブルー法などで評価する。
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