2021 Fiscal Year Research-status Report
IDO-1を分子標的とした天然物由来の難治がん治療薬のシーズ探索とその併用効果
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20K16033
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
松尾 侑希子 東京薬科大学, 薬学部, 講師 (70434016)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | IDO-1 / トリテルペン配糖体 / ステロイド配糖体 / 併用効果 / 細胞毒性 |
Outline of Annual Research Achievements |
① IDO-1 阻害活性の評価および構造活性相関の解明 ユリ科オウゴンオニユリは長崎県対馬にのみ分布するオニユリの変種である。オニユリのりん片葉は日本薬局方においてビャクゴウの基原植物に規定されている。一方、オウゴンオニユリ鱗茎の含有成分は明らかにされていない。そこでオウゴンオニユリ鱗茎の成分探索を行い、2種の新規を含む3 種のフロスピロスタノール配糖体、3 種のコレスタノール配糖体、2 種のスピロスタノール配糖体を単離した。いずれの化合物も本植物からの単離は今回が初めてであり、かつオニユリからの報告もないため、本研究成果は希少な植物資源の化学成分を明らかにした点で重要な意義がある。6種の既知ステロイド配糖体についてIDO-1阻害活性を評価したところ、1種のスピロスタノール配糖体が100microMにおいて、約50% の阻害率を示した。その他の化合物は活性を示さなかった。スピロスタノール配糖体の IDO-1 阻害活性の報告は今回が初めてである。また、昨年度に成分探索を行ったトベラ葉由来の12種のトリテルペン配糖体についてもIDO-1阻害活性を評価したが、いずれも活性は示さなかった。 ②難治がん細胞に対する毒性および併用効果の評価 オウゴンオニユリ鱗茎の粗画分エキスについてSBC-3ヒト小細胞肺がん細胞に対する細胞毒性を評価した。その結果、EtOAc 溶出画分に弱い細胞毒性が認められた。トベラ葉由来の12種のトリテルペン配糖体について、エトポシドおよびドキソルビシンとのSBC-3細胞に対する毒性の併用効果を評価した。その結果、3種のトリテルペン配糖体が併用効果を示した(CI値0.50-0.67)。同様に、ジギタリス種子由来の9種のステロイド配糖体の併用効果を評価したところ、4種の化合物が強い併用効果を示した。さらに細胞死メカニズムとして複数のシグナルを検出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
① IDO-1 阻害活性の評価および構造活性相関の解明、 昨年度の植物エキススクリーニングでは活性を示す植物検体が見出されなかった。そこで本年度は、当教室のライブラリーや先行実施した成分研究から得られた単離化合物について、IDO-1 阻害活性を評価した。合計6種のステロイド配糖体、12種のトリテルペン配糖体について測定した結果、1種のスピロスタノール配糖体のみが弱い活性を示した。これまでにスピロスタノール配糖体のIDO-1阻害活性は報告されておらず、新たな知見となる。一方で現在までの活性化合物が1種のみなので、構造活性相関は見出せていない。次年度は単離化合物の活性評価を中心に行うという見通しを立てることができた。 ②難治がん細胞に対する毒性および併用効果の評価 トベラ葉由来の12種のトリテルペン配糖体は、SBC-3細胞に対する毒性がいずれもIC50 15.2-29.5microMであった。しかしながら、0.001microMという低濃度で抗がん剤との併用効果を示すトリテルペン配糖体を3種見出すことができた。加えてTIG-3正常細胞に対しての毒性も評価することができた。ジギタリス種子由来のステロイド配糖体については、併用効果に加えて、腫瘍細胞選択性、細胞死メカニズムの検討も達成することができた。IDO-1阻害活性と細胞毒性の関連性は未だ見いだせていないが、次年度の実験計画も見据えて実施することができた。以上より,本研究課題は概ね順調に進行していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
新たな知見としてスピロスタノール配糖体にIDO-1阻害活性を見出すことができた。当初の予定ではアルカロイドやキノン骨格を有する天然物の評価を中心に計画していたが、次年度は当教室の天然物ライブラリーの強みでもあるステロイド配糖体にも着目したい。構造と活性の相関を得ることを目標に、次年度は単離化合物の活性評価を中心に行う。 難治がん細胞に対する毒性および併用効果の評価については、エトポシドおよびドキソルビシンの腫瘍細胞毒性を増強するトリテルペン配糖体を3種見出した。この結果を端緒に、次年度は単離化合物の併用効果の更なる評価と、IDO-1阻害活性との関連を見出していきたい。 次年度は最終年度であり、⑤ 細胞死メカニズムの解析、および細胞中のトリプトファン/キヌレニンの定量を計画している。IDO-1 阻害活性を示した難治がん治療薬のシーズ化合物について、その細胞死がアポトーシス、ネクローシス、オートファジーのいずれであるか評価する。具体的には細胞の形態観察、カスパーゼなど酵素活性の測定、阻害剤の添加、ウエスタンブロット法、ELISA法などで評価する。
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Research Products
(6 results)