2023 Fiscal Year Annual Research Report
Investigation of anti-cancer effect of anti-EGFR antibody based on quantitative evaluation of its pharmacokinetics and glycosylation in cancer patients
Project/Area Number |
20K16040
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
柴田 海斗 信州大学, 医学部附属病院, 薬剤主任 (00857055)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | セツキシマブ / 血清中濃度 / がん悪液質 / 炎症性サイトカイン / がん患者 / 忍容性 / 頭頸部がん / 糖鎖修飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
抗ヒト上皮成長因子受容体(EGFR)抗体薬のセツキシマブを用いたがん化学療法において、抗腫瘍効果の不十分な患者や重篤な有害作用を伴う患者が一定数存在する。がん悪液質の病態では、炎症性サイトカインの活性化によってタンパク質の異化や糖代謝が変化しており、セツキシマブもその影響を受ける可能性がある。また、がん悪液質は骨格筋量の減少や精神神経症状を引き起こすことで、セツキシマブに対する忍容性を低下させる可能性がある。本研究では、がん悪液質の病態に着目して、頭頸部がん患者におけるセツキシマブの血中動態および糖鎖修飾と臨床効果を解析し、それらに及ぼす患者背景の影響を明らかにすることを目的としている。 最終年度の令和5年度では、頭頸部がん患者における全身倦怠感およびせん妄の発現に及ぼす血清中セツキシマブ、悪液質、炎症性サイトカイン、併用薬の影響について詳細な解析を行った。その結果、全身倦怠感の発現には血清中インターロイキン-6(IL-6)濃度が関連しており、その重症化には血清中IL-6濃度の上昇、アルブミン濃度の低下および悪液質の進行が関連していた。せん妄の発現および重症化に血清中セツキシマブ、悪液質、炎症性サイトカインは関連しなかった。また、全身倦怠感およびせん妄の発現にオピオイド鎮痛薬、睡眠薬、抗精神病薬及び抗うつ薬の併用は関連しなかった。 血中セツキシマブのN型糖鎖構造解析法の確立に関して、タンパク消化の前処理方法および糖鎖構造解析の分析条件検討を行ったものの、臨床検体における糖鎖修飾の評価には至らなかった。 研究期間全体を通じて実施した研究の成果について、がん悪液質の進行とそれに関連する炎症性サイトカイン及び血清アルブミンの挙動は、血清中セツキシマブ濃度の低下に関連していた。また、悪液質の病態における全身性の炎症はセツキシマブに対する忍容性の低下に関連していた。
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