2020 Fiscal Year Research-status Report
皮膚障害発現機序の解明によるボリコナゾールの至適投与設計法の開発
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20K16041
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
山田 尚広 浜松医科大学, 医学部附属病院, 薬剤師 (20793540)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ボリコナゾール / Nオキシド体 / P-VNO / PD-VNO / 酸化ストレスマーカー / 皮膚障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は、臨床研究においてヒト血液検体を用いてボリコナゾール、代謝物であるNオキシド体、Nオキシド体の光分解物(P-VNO)及びP-VNOの熱分解物PD-VNOの各濃度を同時測定し、その体内動態について評価、血中の各種皮膚酸化ストレスマーカーとの関係性を確認することを目的とした準備を進める計画であった。 具体的には、ヒト検体評価を行うための患者登録を開始し、並行して患者情報、臨床検体の収集を行うことと、主にそれら検体を測定するLC-MS/MSを用いた系の確立を進めた。 LC-MS/MSによる測定では、血液検体の前処理法として簡便なアセトニトリル添加による除たんぱく法を検討し、90%以上の良好な回収率で処理可能であることを確認した。また、測定については、内部標準物質としてボリコナゾールの重水素体を用い、ボリコナゾール、Nオキシド体、PD-VNOについて10分の繰り返しの測定でピークを良好に分離し、血漿検体中でも夾雑物の影響なく、各薬物で十分な感度(ボリコナゾールで100-8000 ng/mL、Nオキシド体で100-8000 ng/mL、PD-VNOで10-800 ng/mL)を検出できる条件を調整した。さらに、各薬物で良好な直線を描く検量線についても確認している。 一方で、P-VNOについては標準試薬が入手困難であること、また熱への安定性の問題もあるため、測定系へ組み込むことは断念することとした。 以上の測定条件にて、残りはバリデーション、安定性試験などを行うことで系の確立は完了する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度の計画は、ヒト検体評価を行うための患者登録を開始し、並行して患者情報、臨床検体の収集を行うこと、また主にそれら検体を測定するLC-MS/MSを用いた系の確立であり、概要に示した通り概ね予定通りの進捗である。 ただし、計画では測定を予定していたP-VNOについて、標準試薬の入手困難、測定難度の高さの問題から、今回は濃度評価はしないこととなった。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は、測定については残された確認事項を行い系を完成させる。 また、その後は申請時の計画通り、登録症例が目標数に到達するまで患者登録を継続し、患者情報、臨床検体の収集を継続する。さらに、ケラチノサイトを用いたボリコナゾール、Nオキシド体およびPD-VNO添加、UV照射、熱負荷の条件を加味した細胞障害性試験を実施する。一定数の患者検体が収集できていれば、ヒト検体の血中濃度測定も行う。 患者の薬物代謝酵素の遺伝子解析(CYP2C19、CYP3A5、FMO3)、皮膚障害関連因子の測定を行う。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主な理由としては、ELISA用マイクロプレートリーダー(ChroMate4300)や関連消耗品(限外濾過キット等)の購入を見送ったためである。令和2年では、上記物品を購入しなくとも研究計画に支障は生じなかった。また、出張を予定していたものも、コロナ禍の影響でオンライン対応となったことなども費用繰り越しの要因となっている。 今後の使用計画については、細胞実験を進めていく段階になりマイクロプレートリーダーや関連消耗品は必要となるため、そちらに充当して使用する計画である。
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