2023 Fiscal Year Research-status Report
肝移植後の免疫寛容における鍵分子の特定と機能解明に関する研究
Project/Area Number |
20K16046
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山本 奈々絵 九州大学, 大学病院, 薬剤師 (70770626)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 免疫寛容 / タクロリムス / 肝移植 |
Outline of Annual Research Achievements |
タクロリムスは臓器移植後の拒絶反応抑制を目的に使用されるが、薬物動態の個体差が大きいため、血中濃度モニタリングに基づく投与設計が必須とされている。タクロリムス体内動態の個体差に関する研究は盛んに行われてきており、タクロリムス体内動態の個体差は薬物代謝酵素CYP3A5の機能欠損を引き起こすCYP3A5*3多型(遺伝子多型)の影響を強く受ける事などが明らかにされている。しかし、血中濃度が目標域にあるにもかかわらず拒絶反応を示す症例が散見され、タクロリムスに対する感受性にも個人差があることが指摘されている。 我々は、C型肝炎ウイルス(HCV)に感染している肝移植患者を対象とした網羅的な遺伝子解析を実施し、肝移植後のHCV治療あるいは免疫抑制療法に対する感受性に影響を与えるいくつかの新しい遺伝子を見出し、これらの遺伝子を「Immunomodulatory factors of hepatitis C reactivationand rejection 」(以下、IFR)と命名した。臓器移植術において、急性拒絶反応に関与しているのは主に細胞障害性T細胞(cytotoxic T lymphocyte:CTL)と細胞障害性リンパ球(natural killer cell:NK細胞)と考えられている。IFRはCTLの細胞死を誘導するとの報告があるが、詳しいシグナル伝達やNK細胞に対する作用については不明である。そこで本研究では、IFRがNK細胞に対してCTLと同様に細胞死または細胞傷害活性の低下を誘導するのかを明らかにするため、ヒトNK様細胞株KHYG-1とヒト慢性骨髄性白血病細胞株K562を用いてkilling assayを行った。その結果、組み換えIFRを添加することによって、KHYG-1細胞の細胞傷害活性が低下する傾向にあることを確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在までにヒトNK様細胞株KHYG-1細胞とヒト慢性骨髄性白血病細胞株K562細胞を用いてkilling assay系を構築し、IFRによるKHYG-1の細胞傷害活性が低下していることを明らかにした。また、プライマリー細胞を用いた評価系を確立した。一方でIFRの作用メカニズムについては、十分な結果が得られておらず当初の計画より遅れていると言わざるを得ない。
|
Strategy for Future Research Activity |
Killing assay系を用いてIFR存在下でKHYG-1の細胞傷害活性が低下することを明らかにした。さらにプライマリー細胞を用いてIFRが免疫系に影響を与えていることを明らかにしたが、どのような受容体や細胞内シグナルが関与しているかについては不明である。そこで、今後はIFRによる細胞内シグナル伝達経路に焦点をあてて解析を行い、IFR の作用メカニズムについて明らかにする予定である。
|
Causes of Carryover |
組み換えタンパク質を大量に発注する予定であったが、共同研究者より譲渡されたため発注不要となった。また、別の課題で他の研究助成金を獲得し、予定よりも本研究のエフォートが低下したことがあげられる。2024年度はサイトカインやグランザイムB解析を中心に行い、成果をまとめていく予定である。
|