2020 Fiscal Year Research-status Report
多孔性シリカにイオン液体を封入した粉末経鼻製剤による水溶性中分子の脳移行性の解析
Project/Area Number |
20K16059
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
鈴木 直人 日本大学, 薬学部, 助教 (60756005)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | イオン液体 / 経鼻投与 / 水溶性中分子 / 鼻腔内滞留性 / Calu-3細胞 / 粘膜透過性 / 多孔性シリカ / 粉末化 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は,(1)イオン液体のスクリーニングとキャラクタリゼ―ション,(2)水溶性中分子の経鼻投与におけるイオン液体の併用が脳移行性に及ぼす影響および(3)イオン液体の粉末化に関する基礎検討をそれぞれ進めた. イオン液体のスクリーニングは計画通り進行し,コリンおよび有機酸からなるイオン液体についてスクリーニングし,イオン液体の形成の可否を,熱分析,赤外分光法およびNMRにより評価した結果,数種の組合せにおいてイオン液体の形成が認められた.また,各イオン液体に対する水溶性中分子の溶解量および音叉振動式による粘度測定を実施した.また,2021年度に予定していた経鼻投与におけるイオン液体の有用性の評価にも着手した.水溶性中分子モデル化合物のイヌリンを溶解したイオン液体をマウスに経鼻投与し脳移行量を測定した.この結果,イオン液体の併用によりイヌリンの嗅球および脳移行量が増加した.これは,イオン液体の併用により投与液が増粘し鼻粘膜表面に滞留するイヌリン量が増加したためと考えられた.さらに,イオン液体を封入した経鼻製剤を調製するため,多孔性シリカに対するイオン液体の封入を試みた.一定量の多孔性シリカに対して,様々な質量比のイオン液体を加えて混合した後,多孔性シリカ表面に残存するイオン液体を赤外分光測定により定性的に評価したところ,同体積の水と比較して低い吸収効率を示した.これはイオン液体の高い粘度に起因するものと考えられる.今後は混合条件等について検討を進め,多孔性シリカに対する効率的なイオン液体の封入条件について検討を進める.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度計画していたイオン液体のスクリーニングとキャラクタリゼーションは概ね実施し,2021年度に予定していた検討項目の一部についても着手している.
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は,イオン液体による鼻粘膜透過性促進効果ならびに細胞傷害性について,気道上皮モデルであるCalu-3細胞を用いて検討する.また,イオン液の製剤化に関する検討として,多孔性シリカに対するイオン液体の封入の効率化についても並行して検討を進める.さらに,得られた結果については学会および学術雑誌にて随時発表する.
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Causes of Carryover |
新型コロナ対策の緊急事態宣言の発出に伴う研究期間の短縮により,イオン液体のスクリーニングに使用する有機酸類の削減にともなう試薬類および備品の購入が減少した.これに加えて,学会のオンライン化に伴う旅費も減少したため,当該繰り越し助成金が生じた.ただし,2020年度に得られたイオン液体の種類が多かったため,これらの動物評価および細胞評価に用いる物品の購入に当該繰り越し助成金を充てる.
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