2020 Fiscal Year Research-status Report
小腸粘膜恒常性を標的とした非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の新規治療法の研究
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20K16063
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Research Institution | Kobe Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
河内 正二 神戸薬科大学, 薬学部, 講師 (30549308)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 非アルコール性脂肪肝炎(NASH) / アミオダロン塩酸塩 / 腸肝連関 |
Outline of Annual Research Achievements |
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は、脂肪肝に留まらず、肝硬変や肝細胞癌へと進行し、生命予後に影響しうる疾患である。NASHには、生活習慣病を基盤とするものと、薬剤が原因となるものがあるが、両者の発症を抑制できる機序は解明されていない。近年、肝臓の炎症や線維化を伴うNASHの進展には、腸内細菌由来成分が関与する腸肝連関が注目されている。申請者は、食餌性および薬剤性のNASHモデルマウスの病態解析のなかで、小腸粘膜保護によって恒常性を維持することにより、肝臓における炎症と脂肪沈着を予防できる可能性を示してきた。 今年度は、アミオダロン誘発NASHモデルマウスを作成して、どのような小腸粘膜障害が生じているのかを検討した。マウスにアミオダロンを200mg/kgの用量で7日間経口投与することで、肝重量の増加、肝臓での脂肪沈着、血漿中ALT濃度の増加が認められ、NASHの病態を反映していることが確認できた。また、アミオダロン誘発NASHモデルマウスの小腸では、絨毛が短縮していることを明らかにした。そこで次に、小腸粘膜透過性を評価した。アミオダロン誘発NASHモデルマウスの小腸粘膜ではタイトジャンクションにおける重要なタンパク質であるZO-1の局在が低下していた。さらに、蛍光標識されたデキストラン(FITC-デキストラン)の血漿中濃度が増加していた。これらの結果より、アミオダロン誘発NASHモデルマウスでは小腸粘膜のバリア機能が障害されている可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた研究目標①のアミオダロン誘発NASHモデルマウスではどのような小腸粘膜障害が生じているのかについては概ね検討を終了した。研究目標②の小腸粘膜障害により門脈中へ腸内細菌由来成分が移行しているかについても検討を開始している。
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Strategy for Future Research Activity |
アミオダロン誘発NASHモデルマウスでは小腸粘膜障害により門脈中への腸内細菌由来成分の移行が予想されるため、門脈中のエンドトキシンをELISAキットで定量する。そして、これらが肝臓での炎症の要因となっているかについて検討する。具体的には、マクロファージのマーカー分子を蛍光免疫染色して肝マクロファージの浸潤を評価する。さらに、肝臓において、炎症性サイトカインや線維化マーカーの発現量を定量し、肝臓での炎症と線維化を評価する。
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Causes of Carryover |
旅費として国内学会出張費用を計上していたが、今年度は学会へは参加しなかった。また、論文投稿には至らなかったため英文校正費および論文投稿費の使用はなかった。以上のことから使用額が予定よりも少なくなった。研究物品の購入や論文投稿費用などに使用する予定である。
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