2020 Fiscal Year Research-status Report
妊娠中の免疫抑制薬使用が妊娠経過・転帰および児の奇形・発育・発達に与える影響
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20K16070
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
野田 あおい 東北大学, 東北メディカル・メガバンク機構, 助手 (40835625)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 免疫抑制薬 / 妊娠 / レセプトデータ |
Outline of Annual Research Achievements |
妊娠を希望する女性や妊婦の中には、免疫抑制薬を使用する必要のある患者が存在する。しかしながら、妊娠中における免疫抑制薬使用の安全性に関するエビデンスは、不十分である。そこで、今年度はレセプトデータベースを用いて、妊娠中の免疫抑制薬の処方状況を調査した。 2005年1月~2016年8月の間に健康保険組合に在籍し、JMDCレセプトデータベースに含まれる3,836,202人から、女性1,742,958人を抽出し、さらに誕生月と健康保険組合加入月が同月の児と連結可能な女性(母親)76,843人を抽出した。児の誕生月の前11か月間、同じ健康保険組合に在籍し、傷病名に含まれる妊娠週数が利用可能な母親41,693人のうち、妊娠前180日~出産後180日の期間、同じ健康保険組合に在籍する母親33,941人を評価対象集団とした。 妊娠前180日の間に免疫抑制薬が処方されていた妊婦は34人(10万人あたり10.0人)であったが、妊娠中では27人(10万人あたり8.0人)で、その内訳は、経口薬では、アザチオプリン(AZT)3人、シクロスポリン(CYA)2人、タクロリムス水和物(TAC) 4人、ミゾリビン1人、メトトレキサート 1人、注射薬ではインフリキシマブ 6人、エタネルセプト 9人、トシリズマブ2人、セルトリズマブ1人であった。妊娠初期から中期、末期へと処方割合は減少していたが、出産後には38人(10万人あたり11.2人)と、処方割合が増加する傾向が見られた。 また、2018年に妊婦等に対する禁忌が見直された免疫抑制薬3剤(TAC、CYA、AZT)を妊娠中に使用していた9人について調査した。服用したと推定される日は21~268日、それぞれの用量はTAC 2-3mg/日、CYA 10-150mg/日、AZT 100mg/日、出産時の平均年齢33±2.5歳、平均妊娠週数は35.8±2.5週であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
レセプトデータを用いて、妊婦への免疫抑制薬の処方状況を明らかにした。 レセプト上で同定された妊婦(母親)およびその児33,941組を対象とした。児の保険資格取得情報・世帯情報に基づいて、妊婦(母親)と出生児のセットを抽出し、対象妊婦のレセプト傷病名欄の妊娠週数と分娩・流産に関連した診断・処置の情報等から、各妊婦の妊娠期間を同定した。妊娠中の免疫抑制薬使用状況が明らかになったので、今後、児の奇形・発育・発達との関連を見ていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
レセプトデータ上の傷病名についてのバリデーション研究に基づいて、奇形傷病名(ICD-10コード:Q00-Q89 以下は除外:ICD-10 コード: Q10, Q162, Q17-Q182, Q184-Q189, Q250, Q270, Q381, Q515, Q516, Q520-Q527, Q53, Q664-Q666, Q69, Q70, Q81-Q84, Q950-Q952, Q954, Q955, Q959)を見ていく予定である。その結果を基にして、これまでに抽出した母親の免疫抑制剤処方状況と児のアウトカムとの関連を見ていく。 また、妊婦コホート研究の基盤を用いて、妊婦の免疫抑制薬の使用状況、妊婦の免疫抑制薬使用と妊娠経過および妊娠転帰との関連、妊婦の免疫抑制薬使用と児の奇形・発育・発達との関連を明らかにする。 レセプトデータから得られた結果と合わせ、妊娠中の免疫抑制薬の使用が、妊婦の妊娠継続・転帰および児の奇形・発育・発達に与える影響に関するエビデンスを創出していく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の拡大により、出張ができなかった。また、密を避けるために追加の人員を雇わなかった。次年度以降は、研究基盤を拡張し、より信頼性の高いエビデンスの創出に努める。
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