2020 Fiscal Year Research-status Report
腸内細菌叢の変化に着目したPPI投与が及ぼす薬物代謝能への影響の評価
Project/Area Number |
20K16073
|
Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
田中 達也 浜松医科大学, 医学部附属病院, 薬剤師 (20858071)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | PPI / ボノプラザン / CYP3A4/5 |
Outline of Annual Research Achievements |
プロトンポンプ阻害薬(PPI)の薬物相互作用は、併用薬の血中動態および臨床効果を変動させることが臨床上の問題になっている。本研究では、ヒトにおけるPPI投与時の腸内LCA産生菌の変化が及ぼす薬物代謝能への影響およびそのメカニズムを明らかにすることを目的に、①ヒトでのPPI投与による薬物代謝能(内因性CYP活性マーカー)および腸内LCA産生菌(Bacteroides属やClostridium属など)の変化の評価、②PPIの種類とその血中濃度が及ぼす薬物代謝能や腸内細菌叢への影響の評価、③PPI投与の模擬環境下におけるヒト肝・腸管細胞でのCYP3A4発現量とその活性の評価を行うこととしている。 2020年度はPPIのうちボノプラザンおよびその代謝物(M-1)のHPLCを用いた測定系の確立を実施した。また、M-1によるCYP3A4/5阻害のin vitro評価を実施した。 測定法はODSカラムを用いて、グラジエント溶出によるLC-MS/MS法で行い、分析時間は8分であった。ヒト血漿における検量線は、ボノプラザンおよびM-1において、それぞれ0.2-80、0.4-160 ng/mLの濃度範囲で直線性を示した。それらの範囲内における真度及び精度の日内・日間変動は15%以内であった。前処理における回収率は95.5-110.6%であった。また、胃炎または早期胃癌患者におけるボノプラザンおよびM-1の血中濃度は、それぞれ2.5-31.8、5.3-113 ng/mLであり、作成した検量線の範囲内での定量が可能であった(N=19)。 ボノプラザン主代謝物M-1は、1 microg/mLにおいてCYP3A4/5を阻害せず、5 microg/mL以上ではCYP3A4/5に対する部分阻害活性を示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は、ボノプラザンおよびその代謝物の測定法の確立に時間を要した。また、ボノプラザンの主代謝物M-1のCYP3A4/5への影響について評価した。 上記内容を実施していたことから、患者登録の開始に遅れが生じているが、2021年度より開始する予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
患者登録を開始し、患者検体の収集、内因性CYP活性マーカーの測定、薬物血中濃度測定、腸内細菌叢解析を開始する。 また、データベースを用いてPPI投与による腸内細菌および併用薬剤への影響について評価を進める。
|
Causes of Carryover |
ボノプラザンおよびその代謝物M-1の標準試薬について、既に所有していたものがあり、現時点では不足していないことから購入していないため。また、患者登録および患者検体の収集ができておらず、検体の測定が実施できていないため、一部消耗品の購入が見送られたため。 2021年度からは患者登録および患者検体の収集を開始し、消耗品関連の購入し、各種測定を開始する予定である。
|