2020 Fiscal Year Research-status Report
パラオキソナーゼ1活性の病態変動指標としての有用性の検討
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20K16079
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
大浦 華代子 熊本大学, 大学教育統括管理運営機構, 特任助教 (80452879)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | パラオキソナーゼ1 / 変形性膝関節症 / Kellgren-Lawrence分類 / メタボリック症候群 / HDL |
Outline of Annual Research Achievements |
変形性膝関節症(OA)の病態進行度はX線やMRIにより診断されるのが一般的であり、血液や尿中のバイオマーカーは未だ見出されていない。OAでは滑膜の炎症に伴う毛細血管透過性の亢進により、関節液に多くの血漿成分が移行する。本研究では、OAの病態進行度の把握に関節液に浸潤した血漿成分が利用可能であるか検討することを目的に、簡便に測定可能なパラオキソナーゼ1(PON1)に着目し、OA患者(60名)の関節液および血清(各グレード11-24名)のPON1活性とX線診断による病態グレードI-IV(Kellgren-Lawrence分類)との関係を評価した。血清中のPON1活性について、Paraoxonase(PO)活性およびArylesterase(AE)活性は病態進行に従い、低下する傾向を示した。関節液ではPO活性、AE活性ともに初期のグレードIからグレートⅡに進行した際に低下した。PO活性は多型の影響を受けるが、多型とは関係なく低下する可能性が示された。血清と関節液中の活性の比較においては、AE活性では相関が認められなかったが、PO活性には相関が認められた。関節液中のPON1活性はOA初期から中期に移行する際に低下し、特に血清と関節液間で相関が認められたPO活性は病態進行度の指標の一つとして応用できる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
R2年度はPON1活性測定のための関節液低粘度化条件の検討、およびOAの病態進行とPON1活性との関連性の検討を研究計画していた。関節液の低粘度化はウシ精巣由来Hyaluronidase(H3884, Merck)を用いて行い、PON1活性に影響しない低粘度化条件を決定した。また、OA患者(60名)に血清と関節液を提供していただき、PON1活性(PO活性およびAE活性)を測定した。血清および関節液中のPON1活性とOAの病態進行との関連性について検討を行った。R2年度の研究はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
R3年度はOA患者の血清および関節液中のHDLおよびMPO濃度を測定し、PON1活性とHDL、MPO、さらにはOAの病態進行との相関関係について検討し、学術雑誌への投稿を検討する。さらに、メタボリック症候群とPON1活性との関係性について評価する。メタボリック症候群はOAの発症および進行のリスク因子とされ、メタボリック症候群とOAの間には共通の病因・病態があることが示唆されている。メタボリック症候群から心血管疾患や糖尿病への重症化にはHDL機能の低下が関与することが示されているが、メタボリック症候群の段階でのPON1およびHDL機能との関係性については詳細に検討されていない。そこで、メタボリック症候群とHDL関連タンパク質との関係性について評価し、PON1がOAの発症および進行を予防するための客観的指標と成り得るのか検討する。具体的には、人間ドック受診者の血清中のPON1活性およびコレステロール引き抜き能を測定し、HDL-コレステロール値は人間ドックの検査値を利用して、健常者とメタボリック症候群患者に分類し、PON1活性に対する各パラメータの相関関係を検討する。
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