2021 Fiscal Year Research-status Report
パラオキソナーゼ1活性の病態変動指標としての有用性の検討
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20K16079
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
大浦 華代子 熊本大学, 大学教育統括管理運営機構, 特任助教 (80452879)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | パラオキソナーゼ1 / メタボリック症候群 / HDL |
Outline of Annual Research Achievements |
HDLコレステロール(HDL-C)値は心血管疾患の予測マーカーとして用いられているが、近年、心血管疾患の予測指標として、HDLのコレステロール引き抜き能(Cholesterol Efflux Capacity; CEC)が着目されている。一方、HDL機能の1つであるリポタンパクの酸化抑制作用を担うParaoxonase 1(PON1)においても、その活性低下と心血管疾患の発症・進行との関連性が報告されている。しかし、発症前の段階でのPON1活性とHDL機能との関係性は検討されていない。本研究では、PON1活性の心血管疾患発症の予測因子としての可能性を検討するため、日本赤十字社熊本健康管理センターの人間ドック受診者の血清を用いてPON1活性、CECおよびHDL-Cの関連性について評価した。2種の活性サイトを持つPON1はParaoxonase(PO)活性とArylesterase(AE)活性の2つの活性で評価した。PON1にはQ192Rの多型があり、多型はAE活性に影響しないが、PO活性に影響する。そこで、QQ型、QR型、RR型の各50名の血清検体を抽出した。全対象者を解析した結果、CECとAE活性の相関は弱く、PO活性では相関関係が見られなかった。PON1の多型別の評価では、QQ型ではCECに対してPO活性、AE活性ともに相関がみられ、PO活性にHDL-Cを加えた2変量回帰分析でさらに強い関係性が示された。QR型、RR型においてもCECに対してPO活性にHDL-Cを加えた2変量回帰分析で相関が増大した。全対象者のCECに対して、多型の影響を多変量解析により評価した結果、QQ型に比べてQR型とRR型はCECが低いことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
R3年度はメタボリック症候群とPON1との関連性について、検討するため、日本赤十字社熊本健康管理センターにて人間ドックを受診した血清サンプルのコレステロール引き抜き能の測定およびPON1活性の測定を計画していた。最初に、コレステロール引き抜き能に従い、5群(各10名)のサンプルを抽出し、HDL-Cを含めた血液生化学検査のパラメータ、コレステロール引き抜き能およびPON1活性の関係について評価した。次に、PON1の多型毎の各50名のサンプルを抽出し、HDL-Cを含めた血液生化学検査のパラメータ、コレステロール引き抜き能およびPON1活性の関係について評価した。R3年度の研究はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
R4年度は、R3年度で評価したメタボリック症候群とPON1活性との関係性に関する結果を学術雑誌に投稿する。また、変形性膝関節症患者の血清および関節液中のHDL-CおよびMPO濃度を測定し、PON1活性と変形性膝関節症の病態進行との相関関係について検討する。メタボリック症候群は変形性膝関節症の発症および進行のリスク因子とされ、メタボリック症候群と変形性膝関節症の間には共通の病因・病態があることが示唆されている。メタボリック症候群から心血管疾患や糖尿病への重症化にはHDL機能の低下が関与することが示されているが、メタボリック症候群の段階でのPON1およびHDL機能との関係性については詳細に検討されていない。そこで、R3年度の結果より得られたメタボリック症候群とHDL機能との関係性に関するパラメータの指標値を利用して、HDL機能と変形性膝関節症の発症および進行に関連があるのか検討する。
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