2022 Fiscal Year Annual Research Report
パラオキソナーゼ1活性の病態変動指標としての有用性の検討
Project/Area Number |
20K16079
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
大浦 華代子 熊本大学, 大学教育統括管理運営機構, 特任助教 (80452879)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | パラオキソナーゼ / 変形性膝関節症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では変形性膝関節症(OA)の発症と病態進行を評価する新たな因子を探索した。OAでは高分子量の血漿成分が関節液にリークすることに着目し、関節液内に流入する血漿加水分解酵素活性と病態進行度について比較解析した。二つの活性:Paraxonase(PO)活性・Arylesterase(AE)をもつパラオキソナーゼ(PON)1活性は血清において病態進行に従い、低下する傾向を示した。関節液ではPO活性、AE活性ともに初期のグレードIからグレートⅡに進行した際に低下した。血清と関節液中の活性の比較においては、AE活性では相関が認められなかったが、PO活性には相関が認められ、遺伝子多型に関係なく関節液中のPO活性はグレードII以降で低下することが示された。メタボリック症候群はOA発症および進行のリスク因子であり、メタボリック症候群とOAには共通の病因・病態があることが示唆されている。PON1は高比重リポ蛋白(HDL)の表面上に存在し、LDLの酸化を抑制する。そこで、人間ドック受診者の血清を用いてHDL機能とPON1活性の関係性について評価した。HDLのコレステロール引き抜き能(CEC)とAE活性の相関は弱く、PO活性では相関関係が見られなかった。PON1の多型別の評価では、QQ型ではCECに対してPO活性、AE活性ともに相関がみられ、PO活性にHDL-Cを加えた2変量回帰分析でさらに強い関係性が示された。QR型、RR型においてもCECに対してPO活性にHDL-Cを加えた2変量回帰分析で相関が増大した。また、QQ型に比べてQR型とRR型はCECが低いことが示され、多型別にPO活性とHDL-Cを指標にすることによりCECを予測できることが示唆された。以上のことより、関節液中のPO活性はOA初期から中期に移行する際に低下し、病態進行度の指標の一つとして応用できる可能性が示唆された。
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